滲出性中耳炎
しんしゅつせいちゅうじえん

最終編集日:2022/4/1

概要

滲出性中耳炎は、鼻の奥にある耳管という管が炎症を起こし、鼓膜の奥にある中耳で分泌された滲出液が、耳管から正常に排出されずに中耳にたまってしまう病気です。

3~10歳くらいまでの子どもや高齢者に多く発症します。

痛みはほとんどないものの、発見や治療が遅れると、難聴や耳閉感などの原因になります。


原因

滲出性中耳炎はとくに子どもに多く、おもにかぜが原因で起こります。かぜにより鼻やのどに炎症が起きて、鼻のいちばん奥にあり耳と鼻をつないでいる「耳管」という器官のはたらきが弱くなることで、細菌が中耳に至り、炎症をひき起こします。通常は炎症が治まると中耳にたまったうみが滲出液に変わり、粘膜から吸収されたり耳管を通って排出されたりして治癒します。この働きが低下すると、滲出液が中耳にたまったままになり滲出性中耳炎を発症するのです。

ほかにも、子どもの場合は小児副鼻腔炎(蓄膿)やアデノイド増殖症、大人では加齢変化や悪性腫瘍などにより、耳管がふさがったり狭くなったりすることも原因になります。


滲出性中耳炎

症状

痛みはほとんどありませんが、中耳に滲出液がたまることで「耳のなかに水がたまっている感じ」や「耳が詰まっている感じ」などの耳閉感と呼ばれる症状が現れます。

音も聞こえにくくなるため、乳幼児の場合には話しかけても反応がなかったり、言葉の発達が遅れたりします。そのため「呼んでもふりむかない」「返事をしない」「テレビやゲームの音量が大きい」といったことから滲出性中耳炎が疑われ、診断されることもあります。


検査・診断

滲出性中耳炎の診察にあたっては、顕微鏡や内視鏡により鼓膜を詳細に観察することで、中耳の貯留液が確認できます。

難聴の程度をみるための純音聴力検査や聴力検査、鼓膜の動きをみるティンパノメトリーという検査などが行われます。

またX線検査や内視鏡を用いて鼻内や上咽頭を観察することで、副鼻腔炎やアデノイド肥大などがないかを確認します。成人の場合は、滲出性中耳炎の検査で上咽頭がんが見つかることもあります。


治療

炎症を抑えるために消炎剤や抗ヒスタミン薬などを用います。鼻炎や副鼻腔炎がある場合は、その治療と並行して中耳からの分泌液の排出を促します。

難聴や鼓膜の癒着がみられる場合には、中耳にたまった滲出液を排出させるために耳管から空気を送り込む通気治療を行います。

これらの治療でも改善がみられない場合には、鼓膜切開術や鼓膜チューブ挿入術などの手術を行います。

鼓膜切開術は、鼓膜を切開して滲出液を排出させる治療法で、切開した鼓膜は1週間ほどで自然にふさがります。

鼓膜チューブ挿入術は、鼓膜切開術でも改善しない、あるいは再発をくり返す場合に行われます。滲出液を排出させるための小さなチューブを鼓膜に装着し、治癒するまで数カ月〜2年程度そのままにしておく治療法です。


セルフケア

予防

滲出性中耳炎は子どもの病気と思われがちですが、大人でも発症することが多い病気です。とくに、花粉症などのアレルギー性鼻炎の既往のある人、かぜで鼻がつまっている人などは注意が必要です。

日本人には鼻をすする人が多いといわれますが、こうした癖のある人は、出すべき鼻汁を日常的になかに押し込んでいるため、滲出性中耳炎になりやすいと考えられます。


監修

耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック 院長

大河原大次

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