慢性中耳炎まんせいちゅうじえん
最終編集日:2023/9/26
概要
鼓膜の奥の「中耳」の慢性的な炎症により、鼓膜穿孔(穴が開く)が起こる病気です。中耳は「鼓室」とも呼ばれる空間で、鼓膜、耳小骨という小さな3つの骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)、鼻や上咽頭につながる耳管などがあります。
原因
中耳炎はおもに細菌に感染して起こります。一般的に、急性中耳炎を経て、慢性中耳炎に至ります。急性中耳炎が完全に治癒していなかった、他疾患(滲出性中耳炎など)で用いた鼓膜チューブを抜去した後の鼓膜の穴の回復が不十分だったなどが、慢性化をひきおこします。
中耳炎の起炎菌(炎症の原因となる菌)として、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、インフルエンザ菌などが挙げられます。外部からの侵入よりも、かぜなどで鼻やのどを侵した細菌やウイルスが耳管経由で耳に達し、炎症を起こすほうが多いといわれています。
症状
耳漏(耳だれ)がくり返し起こり、聴力が低下します。
検査・診断
問診のうえ、拡大耳鏡、内視鏡などを用いて、鼓膜や中耳、内耳の様子をみます。ティンパノメトリーという検査では鼓膜の可動性を、ニューマチック型耳鏡では中耳に液体貯留がないかどうかを調べます。側頭骨のCTを撮影し、耳小骨や中耳粘膜の状態を精査することもあります。特殊な繊維の膜(紙)で鼓膜に開いた穴を塞いで聴力の変化をみる中耳機能検査(パッチテスト)も行います。この検査で聴力に改善がみられれば、手術を考慮します。
また、起炎菌を特定するために、耳漏を用いて細菌学的検査を行います。滲出性中耳炎、真珠腫性中耳炎、好酸球性中耳炎、内耳炎などとの鑑別が必要です。
治療
保存療法と手術があります。保存療法だけでは鼓膜穿孔は塞がらず、聴力の回復が得られにくいため、通常は手術を行います。
●保存療法
耳漏を改善する目的で行われます。生理食塩水で中耳を洗浄した後、起炎菌に合った抗菌薬を点耳します。耳漏が重症の場合は、内服薬も用います。
●手術
手術では鼓膜の穴を塞ぎ、聴力の回復を図ります。パッチテストで改善がみられれば、鼓膜穿孔閉鎖術(鼓膜形成術)が適応されます。患者さんの皮下組織を耳たぶなどから採取し、フィブリン糊という医療用の接着薬を用いて鼓膜の穴に接着する方法や、レーザーで鼓膜穿孔の周囲を焼灼した後、人工皮膚素材を用いて穴を塞ぎ、組織の再生能力を利用して回復を促す方法などがあります。
●パッチテストで改善がみられない場合
長期にわたる炎症のために耳小骨の動きが悪くなって聴力が低下していたり、鼓膜と中耳の粘膜が癒着を起こしていたりするときは、上記のような鼓膜穿孔閉鎖術は適応されません。このようなケースでは、耳の後ろを切開して行う鼓室形成術や耳小骨再建術が必要になることがあります。
セルフケア
療養中
●再発予防
昔は「耳に水が入ると中耳炎になる」といわれました。しかしそれは間違いで、中耳炎の原因は、かぜなどによる鼻やのどの炎症が鼻の奥にある耳管という管を通って中耳に炎症を起こします。小児期に、耳に強い痛みを起こす急性中耳炎から中耳に液体がたまる滲出性中耳炎に移行すると慢性中耳炎になります。急性中耳炎、滲出性中耳炎をしっかり治すことが大切です。
また、慢性中耳炎を放置すると、治らない難聴(感音性難聴)やひどいめまい、顔面神経麻痺に至ることもあるので、きちんと治療しましょう。
監修
耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック 院長
大河原大次
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