PMSと月経困難症 ~月経トラブルや婦人科系疾患の対策ポイント

最終編集日:2022/9/21

●20・30代に多い月経前の心身の不調。軽症ならセルフケアで対処可能?


月経前に起こる心身の不調が月経前症候群(PMS)です。20~49歳の日本人女性1187人を対象にした調査によると、中等症から重症の症状がある人は5.3%で、精神面の症状が強い月経前不快気分障害(PMDD)の人は1.2%。試算すると、PMSやPMDDを患う20~49歳の女性は、およそ180万人と推定できます。

乳房の張り・痛み、腹部膨満感、頭痛、むくみ、体重増加、眠気などの身体症状のほか、抑うつ(気分の落ち込み)、イライラ、怒りっぽい、不安になる、悲しくなるなどの精神症状がみられます。月経前の3〜10日間続き、月経が始まると治まるのをくり返す場合に診断されます。


PMSで婦人科などを受診するのは20代が最多といわれていますが、公私ともに責任が増し、多忙な30代以上の受診も目立ちます。

治療としては、PMSダイアリーの記録を行い、自分の症状がいつ、どのくらい強く起きるのかを把握する方法があり、軽症の場合はこれによって自分の症状を理解して客観的な視点を持ち、症状が落ち着く場合もあります。しかし、医療機関を受診している人は重症の場合が多く、薬物療法(症状に合わせて漢方療法を行う、発症の要因である性ホルモンの変化を抑える低用量ピルを処方)を早期に行う傾向があります。


●月経中に起こる痛みは月経困難症? 原因となる婦人科系疾患にも要注意


PMSとは対照的に、月経の始まりとともに下腹部の痛みや腰痛、下痢、吐き気などの症状が現われるのが、月経困難症です。原因が明瞭な「器質性月経困難症」と原因が不明瞭な「機能性月経困難症」があり、具体的な原因となる疾患としては、子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫など挙げられます。しかし機能性と診断された場合でも、検査で診断しづらい子宮内膜症が隠れている場合もあります。


治療法としてはまず、痛みを緩和させるために鎮痛剤や漢方薬を用いた対症療法を行いますが、これのみでは子宮内膜症の進行や発症を防げないため、妊活中でない場合は、積極的にホルモン療法(おもに低用量ピルと黄体ホルモンを用いる)をおすすめしています。なお、内膜症は将来的な卵巣がんのリスク要因ともなるため、長期的な低用量ピルでの治療は卵巣がん発生のリスクを低下させます。


月経困難症による痛みが不妊の原因となることはありませんが、痛みの原因が子宮内膜症の場合、それによる癒着などが不妊の原因となり得ます。また、不妊症の診断を受けた人に後日、診断が困難な子宮内膜症が判明することもあります。そのため、機能性月経困難症と診断された人も漫然と対症療法を行うだけでなく、定期的に評価を受け、ホルモン療法を検討する必要があります。

監修

新宿レディースクリニック 院長

崎山ゆかり

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