お酒の飲みすぎでリスクが上がる病気とは?
最終編集日:2024/4/8
厚生労働省が今年2月に飲酒ガイドライン(「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」)を発表しました。アルコールの摂取によるからだへの影響とリスク、適切な飲酒量や飲酒行動についてまとめています。
●飲酒量は純アルコール量で把握する
飲酒ガイドラインでは、飲酒量を把握する方法として純アルコール量(g)に換算する方法を紹介しています。純アルコール量とは、お酒に含まれるアルコールの量のことで「お酒の量(mL)」「アルコール濃度(度数/100)」「0.8(アルコールの比重)」をかけ合わせて算出します。アルコールの度数はお酒の容器に表示されています。
例えばアルコール度数が5%のビール500mLの純アルコール量は、500×0.05×0.8=20なので20gとなります。この方法であれば、何杯飲んだとか、アルコール度数の強弱で把握するのとは違い、正確に飲酒量が数値化されます。
【種類別・純アルコール量20gが含まれるお酒の量】
アルコール度数は商品によって多少異なるので、以下は比較するための目安です。
〈度数5%のビール〉:ロング缶1本(500mL)
〈度数7%の酎ハイ〉:缶1本(350 mL)
〈度数12%のワイン〉:グラス2杯弱(200 mL)
〈度数15%の日本酒〉:1合弱(170mL)
〈度数25%の焼酎〉:グラス1/2杯(100 mL)
〈度数43%のウイスキー〉:ダブル1杯(60 mL)
●高血圧、脳卒中、がんと飲酒量の関係
ガイドラインでは、参考文献に基づく研究結果として、病気ごとの発症リスクと飲酒量(純アルコール量)の関係を示しています。おもなものは次のとおりです。
〈高血圧〉:男女とも少しでも飲酒をすると発症リスクが上がる。
〈出血性脳卒中〉:男性は1日当たり20g(週150g)、女性は少しでも飲酒をすると発症リスクが上がる。
〈脳梗塞〉:男性は1日当たり40g(週300g)、女性は1日当たり11g(週75g)で発症リスクが上がる。
〈胃がん〉:男性は少しでも、女性は1日当たり20g(週150g)で発症リスクが上がる。
〈大腸がん〉:男女とも1日当たり20g(週150g)で発症リスクが上がる。
〈食道がん〉:男性は少しでも飲酒をすると発症リスクが上がる。女性はデータなし。
〈肝臓がん〉:男性は1日当たり60g(週450g)、女性は1日当たり20g(週150g)で発症リスクが上がる。
〈前立腺がん(進行がん)〉:男性は20g(週150g)で発症リスクが上がる。
〈乳がん〉:女性は1日当たり14g(週100g)で発症リスクが上がる。
これらから、男性と比較して女性のほうがアルコールの影響を受けやすいことがわかります。同様に、高齢者やアルコールを分解する分解酵素の働きが弱い体質の人たちもアルコールの影響を受けやすいとされています。個人差もあるので、上記の数値を超えないことはもちろん、より少ない量の飲酒を心がけることが大事です。
10~20代の若者もアルコールの影響を受けやすい人たちです。まだ脳の発達が途中なので、多量飲酒によって脳の機能が落ちたり、高血圧などのリスクが高まる可能性があります。
●男性は40g以上、女性は20g以上の飲酒量で生活習慣病リスクが高まる
国の基本方針(健康日本21)では、「生活習慣病のリスクを高める量(1日当たりの純アルコール量が男性40g以上、女性20g以上)を飲酒している者の減少」を目標にしています。該当しそうな人は自分の飲酒量を把握して、多いようなら減らしましょう。また、男女ともに60g以上の飲酒は、急性アルコール中毒を起こしたり、酔ってけがをしたりするリスクが高まると注意を促しています。
●健康に配慮しながら楽しくお酒を飲むコツ
健康に配慮しながらお酒を楽しむために、ガイドラインでは「あらかじめ量を決めて飲酒をする」「飲酒前または飲酒中に食事をとって血中のアルコール濃度を上がりにくくする」「飲酒の合間に水や炭酸水を飲むと、アルコールをゆっくり分解・吸収することにつながる」とすすめています。また、毎日飲酒を続けるとアルコール依存症につながる可能性があるとして、1週間のうち、飲酒をしない日を設けることが必要であるとしています。
監修
独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター 精神科医長
湯本洋介
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