アスペルガー症候群
あすぺるがーしょうこうぐん

最終編集日:2022/3/11

概要

アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラムに分類される発達障害です。自分のことばかり話す、悪気なく相手を傷つけてしまう、変化に適応できないなど、対人関係やコミュニケーション、想像力や共感性のイマジネーション、興味が偏り活動がパターン化しやすい、といった部分において特徴があります。

少し変わった人と思われることが多い一方で、知能や言語に遅れはなく、特定の分野で高い能力を発揮することがあります。


原因

アスペルガー症候群の原因ははっきりとは解明されていません。素因としては、何らかの先天的な脳の機能不全、または遺伝的要因にあるのではないかと考えられています。生まれもつ特性による部分が大きいとみられ、それが胎児期や出生後に、脳・心身が発達する過程や、ふだんの生活のなかでの周囲とのかかわりやさまざまな環境要因と相互に影響し合い、脳機能障害として発現すると考えられています。


なお、多くの研究からも親の育て方やしつけが原因でないことがわかっています。


症状

アスペルガー症候群の症状としては次のようなものが挙げられます。

●対人関係、対人コミュニケーションに特徴がある

相手との距離がわからず人づき合いがうまくできないため、自然なコミュニケーションをとることが苦手です。表情やしぐさから相手の気持ちを読み取ることができず、会話がかみ合わないといった支障が出ることもあります。本などで覚えた難解な言い回しを使うなど言葉遣いが独特な場合があります。


●想像力や共感性のイマジネーションに障害がある

相手の気持ちを想像してものを考えたりすることが苦手なため、悪気はなくても相手を傷つける言葉を発してしまうことがあります。また、例え話などを理解しにくい傾向があります。


●興味やこだわりに偏りがあり、活動がパターン化しやすい

ルーティンなこだわりがあり、新しいことや変化に対して強い抵抗がみられます。予想外の事態が起こるとパニックになることもあります。また、好きなことや興味をもったものにはとことんのめり込む傾向があります。


ほかにも、聴覚や視覚など特定の感覚が人よりも敏感または鈍感な場合があります。

知的障害や言語障害がなく、外見や表面上のコミュニケーションからはアスペルガー症候群とわかりにくいため、周囲から無神経、自分勝手と誤解されやすく、本人が孤独感を抱くことも少なくありません。また、本人自身が障害に気づいていないケースもあります。


検査・診断

現在、アスペルガー症候群の診断には、DSM-5における自閉症スペクトラムの診断基準が用いられています。おおまかな内容としては下記のような項目があります。

1)複数の状況(会社と家庭など)で対人関係やコミュニケーションにおける持続的な障害があること

2)行動、興味、パターン化した活動などが2つ以上あること(反復的な身体の運動、会話、固執やこだわり、感覚刺激に対する過敏さ・鈍感さなど)

3)発達早期に1、2にあてはまる症状が存在していたこと

4)症状が原因で対人関係や学業的、社会的、職業的な機能に障害が生じていること

5)これらの障害が知的能力障害や全般性発達遅延によるものではないこと


詳細な問診に加え、知能検査や発達検査などの心理検査が行われるほか、ほかの遺伝学的疾病、併存症の有無も確認されます。


治療

本人や家族、周囲の人たちがその特性を理解し、生活しやすい環境をつくっていくことが重要です。

個々の発達のペースにあわせた療育的な対応が大切で、自分の不得意なところ・得意なところがわかると、その強みを生かせる職場に変えたりすることもできます。

カウンセリングのような心理療法、認知行動療法などは、社会生活を送るうえで必要となることの経験できるのでとても有効です。実際の社会的場面を想定し、相手の気持ちを想像し、どのような対応が適しているかなどを体験していきます。

また、うつ病や不安障害などの二次障害が生じている場合には、抗うつ薬や抗不安薬が処方されることがあります。


セルフケア

療養中

アスペルガー症候群と診断されたら、自分の特性とうまくつき合っていくことが大切になります。家族や周囲の人からの協力をもとに、家庭療育、学校教育、そして就労支援へと、ライフステージを通じたサポートによって生活を安定したものにすることができると考えられています。

監修

赤坂溜池クリニック 院長

降矢英成

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