自閉症じへいしょう
最終編集日:2023/1/11
概要
自閉症は自閉スペクトラム症(ASD)とも呼ばれます。広汎性発達障害、アスペルガー症候群なども含めて、ASDという呼び方が定着しつつあります。コミュニケーションをとることが苦手、特定のことに強いこだわりをもつなどの特徴がみられます。
多くは幼児期から症状が現れますが、学校生活や家庭生活では大きな不都合がない場合にはASDと気づかれず、成人して社会に出て初めて症状による困難を感じて受診し、ASDと診断されるケースが増えています。
決して珍しい病気ではなく、患者数は人口の1%ともいわれ、男性は女性の約4倍の発症頻度とされています。
原因
原因はまだ解明されていません。遺伝的な要因の関与が考えられています。育て方や生活環境が原因で起こるものではありません。
症状
幼児期には次のような症状がみられます。
目をあわそうとしない/笑いかけても笑い返さない/相手の表情や言葉、行為などを模倣することが少ない/言葉の発達が遅い・語彙(ごい)が増えない/こだわりが強い/音や光などに対して感覚が過敏など
成人のASDでは、次のような症状がみられます。
人づきあいで距離感をつかめない/相手の表情や言葉から微妙なニュアンスを読みとることができない/不用意な発言をする/相手の立場に立ってものを考えられない/あいまいな表現が苦手/特定のことに強いこだわりや興味を示す/人との接触が苦手/感覚の過敏など
ASDでは注意欠如・多動(ADHD)を伴うケースも少なくありません。成人のASDでは上記のような症状で社会生活を送りづらくなり、対人恐怖症やうつ、引きこもりなどを併発することもあります。
検査・診断
問診や患者本人さんや家族との面接を行います。30カ月までの乳幼児では「親回答乳幼児期自閉症チェックリスト(M-CHAT)」、学童期には親や教師が答える「SRS-2対人応答性尺度」、成人にはAQ自己評価式指数など、いろいろな評価尺度があるので、それらを用いて診断をつけます。
①持続的で広範囲にわたる、社会的コミュニケーションと対人的コミュニケーションがとりにくい状態にある、②特定の反復的な行動や会話、興味へのこだわり、感覚の過敏あるいは鈍麻がある、などが乳幼児期からみられ、それによって社会生活で支障をきたしている場合に、ASDと診断されます。
幼児から学童期の場合は、知的能力障害や統合失調症、てんかんなどとの鑑別診断、ADHDなどの合併の診断を行う必要があります。
青年期や成人になってからは、コミュニケーションがうまくとれない背景に、うつ、双極性障害などの精神疾患が隠れていないかを診断することも大切です。
治療
ASDを改善する薬物などは、現時点ではまだありません。
病院や学校、療育機関、地域社会などの支援を受けながら、コミュニケーションスキルや日常生活の自律スキルを学ぶことで、本人のQOL(生活の質)を向上させ、社会のなかで生活が送れるようにすることを目標に治療を進めます。
また、青年期以降は本人のこだわりやスタイル、特性が生かせる学校選び、職業選び、ライフスタイル選びを行うことも大切です。イライラや興奮などが強い場合には、抗精神病薬などが処方されることもあります。
セルフケア
療養中
●周囲の対応
ASDは、早いケースでは1歳半の乳幼児健康診査で指摘されることもあります。早く気がつけば、子どもへの対応の仕方などもわかり、子育ての悩みが軽減されるでしょう。
成人してからのASDは、ASDと気づかずに社会のなかでの「生きづらさ」を抱えて生活していることも少なくありません。疑われる場合は、心療内科や精神科を受診して、相談してみましょう。
監修
赤坂溜池クリニック 院長
降矢英成
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