医療機関の選び方

最終編集日:2022/3/30

概要

病気やけがをしたときに、どの医療機関を受診すればよいのか悩むことがあると思います。医療機関には地域のクリニック(診療所)、地域病院、大学病院、専門病院などいろいろな種類があります。事前にそれぞれの特徴や役割を知っておくことが大切です。
軽いけがや病気なら近くのクリニックや診療所が便利です。ところが、軽症でも「大きな病院のほうが安心できる」と地域病院や大学病院を受診する人や、さらに「昼間は診察を受ける時間がない」「夜間のほうがすいている」などの理由で、夜間や休日に、地域病院や大学病院の救急外来を受診したりする人も少なくないのです。
こうしたケースを減らすためにも、かかりつけ医をもつことが大切です。身近に自分の健康状態を把握している医師がいることは緊急時だけでなく、日頃の安心にもつながります。
健康的な生活をつづけていくためにも、医療機関を上手に利用することが大切です。

医療機関の種類と機能

日本の法律で医療行為を行う場所は、「病院」「診療所」「地域医療支援病院」「特定機能病院」「臨床研究中核病院」「助産所」などに分けられています。
設置に必要な病床数(ベッド数)も異なります。


病院:20床以上
診療所:病床が1〜19までの有床診療所と病床がない無床診療所がある
助産所:9床以下
地域医療支援病院:200床以上
特定機能病院:400床以上
臨床研究中核病院:400床以上


この他にも病院、地域医療支援病院、特定機能病院、臨床研究中核病院は、医師や看護師、薬剤師を含む人員配置基準や構造設備基準、管理者の責務などの基準がきちんと定められています。この基準をクリアした医療機関だけが「地域医療支援病院」「特定機能病院」「臨床研究中核病院」という呼称を使えます。
地域医療支援病院は、かかりつけ医を支援し、専門外来や入院、救急医療等、地域医療の中核を担う体制を備えた病院です。
特定機能病院は、高度医療の提供、高度医療技術の開発、高度医療に関する研修などを実施できる能力を備えた病院です。
臨床研究中核病院は、日本の臨床研究の中核的な役割を担うために設けられた病院で、医薬品や医療機器などの開発、国際水準の臨床研究などを行う病院です。


私たちがかぜをひいた、おなかをこわしたなど、ちょっとした病気やけがで医療機関を受診するとき、まず考えるのは地域の病院とともに、医院やクリニックといった「診療所」ではないでしょうか。病院には病床数が20床以上という規定がありますが、医院やクリニックなどの「診療所」は病床がなくても開院できる医療機関で、名前も自由につけることができます。
日本の医療制度は、こうしたさまざまな医療機関が役割分担をすることでスムーズに医療が進められることを想定しています。
「診療所」は、地域で患者と直接向き合う「かかりつけ病院・かかりつけ医」として、病気の初期治療や軽症の場合のケア、在宅患者の治療などを担当します。そして、かかりつけ医がさらに高度な検査や治療が必要と考えた場合に、それまでの治療や病状、使用した薬などの情報を記載した「紹介状」を使って、病院や地域医療支援病院、特定機能病院などへ治療を依頼します。紹介を受けた病院では適切かつ専門的な治療を行い、症状が回復、安定した際には、治療の経緯や現在の病状などをかかりつけ医に連絡して、今後の治療を任せます。
こうした「かかりつけ医から病院、そしてかかりつけ医に」という医療システムがスムーズに回転していくことが大切です。


ただし現状では、多くの人が病気の重症度にかかわらず大病院を選択する傾向が強くあります。その結果、大きな病院に患者が集中し待ち時間が長くなるだけでなく、病院側でも肝心の専門的で高度な治療に専念できなくなるという状況が生まれています。
身近な医院やクリニックなどの「診療所」にかかりつけ医をもつことは、待ち時間や移動時間のむだを省けるだけでなく、日頃から病状について適切なアドバイスを受けられるというメリットがあります。
さらに自身の健康状態を把握している医師がいることは、急な病気や体調の変化などに対応してもらえたり、専門病院などと連携してすばやく適切な処置をしてもらえたりという安心感につながります。


“医療は限りある資源”であることをしっかり理解して、初診でかかる医療機関選びや、本当に119番通報による緊急搬送が必要なのかなどを、しっかり考えることが大切です。

かかりつけ医の役割

最近よく聞く「かかりつけ医」という言葉ですが、どんな医師のことを指しているのでしょうか。
日本医師会の定義では「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」とされています。
つまりかかりつけ医とは、健康に関することを何でも相談でき、必要なときは専門の医療機関を紹介してくれる身近で頼りになる医師のことです。自宅や職場の近くで、知人・友人などの紹介も参考にしながら、納得できる医師を見つけていくのがよいでしょう。
かかりつけ医をもつことのメリットは、まず自分の健康状態を把握している医師が身近にいて、体調の変化などを気軽に相談できるという点です。そのため、早期発見、早期治療につながり回復も早くなります。そして高度な医療が必要な場合も、医師間のネットワークで適切な医療機関を紹介してもらえます。また病気にかぎらず日常の健康管理の相談にも応じてくれます。
かかりつけ医がいないと、自己判断で診療を控えたり、ドクターショッピングをしたりすることで適確な治療が遅れ、その結果、重症化のリスクも高くなってしまいます。
かかりつけ医をもつことは、病気の治療だけでなく、日頃の健康管理の面からもとても重要です。

専門外来

専門外来は特定の症状や病気について高度な専門知識や臨床経験をもった医師が診断や治療を行う診療科のことです。
近年、専門外来は増加傾向にあります。
例えば「頭痛」「リウマチ」「物忘れ」「禁煙」「めまい」「花粉症」「睡眠(睡眠時無呼吸症候群)」「アトピー」「ドライアイ」「不妊」「更年期」「不定愁訴」などがあり、ほかにもさまざまな専門外来があります。
専門外来の受診を検討するときは、自己判断よりも、一度かかりつけ医で診察を受け、必要に応じて専門外来をもつ医療機関を紹介してもらうのがよい方法です。

救急車利用の仕方

日本の救急医療は、119番に通報すれば、消防署の管轄下にある救急車が迅速に、かつ無料で出動するすばらしいシステムをもっています。
しかし近年、緊急搬送の必要がないケースでの要請が増加しており、救急車を要請してから到着するまでの時間、要請した人が医療機関に収容されるまでの時間が以前よりも長くなっています。
救急車および救急医療は“限りある資源”であることをしっかり理解して、要請に際しては、本当に緊急搬送が必要なのかを考えて119番することが大切です。


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監修

寺下医学事務所医学博士

寺下謙三

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