歯肉がん
しにくがん

最終編集日:2021/12/21

概要

歯肉がんは、歯ぐき(歯肉および歯槽粘膜)にできるがんで、口腔がんのなかでは舌がんに次いで2番目の患者数となっています。

歯肉がんの2/3は下あごに発生し、前歯を除く臼歯部に多くみられます。下あごの場合、歯ぐきのすぐ下にはあごの骨があるため、顎骨にがんが浸潤(しみ込むように広がる)しやすく、早期でも手術ではあごの骨の一部を切除する必要があります。

男性に多く、50歳以上の中高年に発症しやすいのが特徴です。頸部リンパ節への転移率は約25%で、転移は下顎の歯肉がんに多くみられます。

原因

はっきりした原因は不明ですが、ほかの口腔にできるがんと同様に、歯肉がんには生活習慣などが影響していると考えられています。

リスク要因としては、喫煙、飲酒、むし歯および補綴物(ほてつぶつ:冠や義歯)の不適合などが挙げられます。また、前がん病変といわれる、粘膜が白色に変化する口腔白板症などとの関係も指摘されています。

症状

初期の段階では自覚症状がほとんどないため、気づかずに進行してしまうことも珍しくありません。また、初期の歯肉がんは、歯肉にできた口内炎のように見えることがあります。

症状が進むと、歯ぐきが腫れたり、歯に痛みを感じたりするようになります。さらに進行すると歯ぐきの出血や悪臭などの症状が現れるようになり、しだいに腫瘍ができ始めます。

腫瘍が大きくなるにつれて痛みが増し、出血しやすくなります。上下の骨にがんが広がると、骨が破壊されるために歯がぐらぐらしたり、抜けたりすることがあります。腫瘍が外側へ進展した場合は顔面が腫れ、内側へ進展すると開口障害が起きます。

検査・診断

歯肉がんは直接口腔内の歯肉を見て診断できるので、医師による視診と触診で、がんであるか否かをほぼ診断することができます。しかし最終的な診断のためには、生検といわれる病変組織の一部を取って調べる病理検査を行う必要があります。

診断には、口腔外科などの専門医に診てもらうことが大切です。がんと診断された場合には、CT検査、MRI検査、PET検査などの画像検査を行い、がんがどの程度の範囲に広がっているか、リンパ節やほかの臓器に転移はないかなどを調べます。

治療

治療は一般に、手術療法、放射線療法、化学療法などを行います。ごく早期の歯肉がんでは放射線療法だけのこともありますが、ほとんどの場合は外科手術によりがんがある部分を切除します。

手術は、がんの進行状況に応じて歯肉とともに顎骨の切除を行うことが多く、がんの浸潤が広範囲の場合は上あごまたは下あごが全摘出となることもあります。首のリンパ節へ転移が認められる場合は、リンパ節や周囲の組織、筋肉などの切除や、頸部郭清術といわれるリンパ節を清掃する手術を行います。

手術によって欠損した部分に対しては、下あごには骨移植やチタンプレートなどを用い、上あごには顎補綴(顎骨の欠損を補う装置や義歯)を用いて再建を図ります。頬部や口底などの再建には、患者さんの上腕や腹部の皮膚や筋肉などを使って移植を行います。

失われた歯は、特殊な入れ歯を用いて回復を図りますが、条件があえば人工歯根(インプラント)による再建も可能です。

セルフケア

予防

歯肉がんは、一部を除き自分の目で見て発見することができる可能ながんです。早期発見に大切なのは、日頃から口のなかを清潔に保ち、歯磨きのときなどに歯ぐきの状態をよく観察することです。

歯ぐきにできた傷や口内炎が1週間以上たっても治らない、または大きくなる場合や、指で触って硬いしこりや腫れがあったり、粘膜の色が変わったりしている場合には、口腔外科などの専門医を受診するようにしましょう。

また、むし歯や歯周病などを長期にわたって放っておいたり、あわない入れ歯や破れたかぶせ物をそのまま使いつづけたりすることは、歯肉がんの発生リスクを高めます。

さらにアルコールの摂取や喫煙も発症率を高めることがわかっています。正しい口腔ケアを行うとともに、生活習慣に気を配ることが大切です。

監修

寺下医学事務所医学博士

寺下謙三

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