甲状腺がん

こうじょうせんがん

最終編集日:2023/11/2

概要

のど仏の下にある甲状腺にできる悪性腫瘍を、甲状腺がんと呼びます。がんの組織によって、乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、未分化がん、低分化型がん、髄様がん、甲状腺悪性リンパ腫の6種類に分けられます。発生頻度は、乳頭がんがもっとも多く、約90%を占め、濾胞がんが約5%、未分化がん、低分化型がん、髄様がんが1~2%程度、甲状腺悪性リンパ腫が1~5%程度を占めます。女性に好発し、男女比は1:2.8とされています。年齢的には、女性では20~30代と70代に発症のピークがあります。

原因

甲状腺がんの多くは原因不明ですが、乳頭がん、濾胞がん、未分化がん、低分化型がんの4種類は甲状腺の濾胞上皮細胞に由来し、髄様がんは傍濾胞細胞に由来するものもあり、カルシトニンなどを分泌します。髄様がんは、発症者の約30%に遺伝的な要因が関与しているとされています。また、慢性甲状腺炎(橋本病)は長期経過中に甲状腺悪性リンパ腫に移行するケースがあることがわかっています。小児期にほかのがんの治療として放射線照射を受けることで、甲状腺がんの発症のリスクが高くなるという報告もあります。

症状

腫瘍が甲状腺内にとどまる間は、症状はありません。増大すると、首の腫れに気づいたり、人に指摘されたりします。入浴時に首の前面のしこりに気づくこともあります。また、嗄声(させい:しゃがれ声)や、嚥下(えんげ)時のむせ、せき・たん、血痰などが現れます。ほかの病気の検査などで受けた頸部超音波(エコー)検査で偶然見つかる場合も多いようです。未分化がんの場合は、とくに急速に増大する甲状腺腫で、さらに発熱や体重減少などの全身症状もきたします。

検査・診断

問診(家族歴、放射線治療歴を含む)、触診、頸部超音波検査、血流の様子をみるドプラ超音波検査、甲状腺の硬さをみるエラストグラフィ検査、がんの広がり具合や転移の有無をみるためのCT、MRI、PET/CTなどの画像検査が行われます。甲状腺機能検査で、甲状腺ホルモンの数値を測定し、甲状腺炎との鑑別診断に炎症マーカーを用います。髄様がんで上昇する腫瘍マーカー(カルシトニン、CEA)の測定も行います。未分化がんでは、赤沈の亢進や血清CRP、白血球数の増加が認められます。穿刺吸引細胞診で細胞を採取し、病理検査を行うことで、がんの種類や性質などを精査して確定診断をつけます。

遺伝性の髄様がんを疑う場合は、遺伝が関与した家族性のものでないか、遺伝子検査(RET遺伝学的検査)も行います。ほかの甲状腺の病気や良性腫瘍との鑑別が必要です。


【それぞれのがんの特徴】

●乳頭がん……比較的容易に診断がつけられます。増殖速度はゆっくりで、治りやすいとされています。リンパ節転移を起こしやすい性質がありますが、発育が遅いため、生命予後は悪くはありません。ただし、再発をくり返すタイプでは悪性度が高い未分化がんに移行することがあるため、注意が必要です。


●濾胞がん……40~60代の女性に好発し、高齢での発症のほうが、悪性度が高いことが多いとされています。良性の濾胞性腫瘍との鑑別がむずかしく、切除後の病理検査で診断がつくケースも少なくありません。頸部リンパ節への転移が少ない反面、肺、骨などに血行性転移をします。


●髄様がん……血液中のカルシトニンとCEAという物質の値が上昇します。リンパ節転移や肝臓への遠隔転移がある場合の治療成績はよくありません。乳頭がんや濾胞がんより悪性度は高いとされています。


●低分化型がん……乳頭がん、濾胞がん、髄様がんと比較すると進行が速めで、周囲の組織への浸潤(染み込むように広がる)や遠隔転移しやすい特徴がありますが、症例数が少ないことから詳細はまだ不明です。


●未分化がん……悪性度の高いがんで、進行は急速です。男女比が1対1であるのも特徴的です。急速に腫大する甲状腺腫の場合は、未分化がんを疑います。


●甲状腺悪性リンパ腫……進行が速く、急速に増大する頸部腫瘤をきたし、呼吸困難、嗄声、嚥下困難などを伴うことがあります。病期によって異なりますが、化学療法や放射線治療が有効な場合も多くみられます。ほとんどが橋本病の長期経過中に発症し、成熟B細胞由来のMALTリンパ腫に分類されます。

治療

がんの種類、進行度、全身状態などを考慮して、手術、放射線治療、放射性ヨウ素内用療法、甲状腺刺激ホルモン(TSH)抑制療法などが選択されます。1cm以下の乳頭がんでは、積極的な治療を開始せずに、経過観察をつづけることもあります。


●手術

甲状腺は左と右に蝶の羽のように広がっていますが、がんのある側のみを切除する「甲状腺片葉切除術」と、甲状腺全体を切除する「甲状腺全摘術」があります。がんの種類、進行度などによって選択されます。リンパ節転移がある場合、あるいは術後の転移・再発のリスクが高い場合には、リンパ節郭清も行われます。

乳頭がん、濾胞がん、低分化型がんでは手術が標準治療とされています。良性かどうかの診断がつかない濾胞がんに関しては、片葉切除術を行い、病理診断で濾胞がんと診断されてから、残した片葉も切除するという方法がとられることもあります。

手術の際に生じる合併症としては、反回神経麻痺による嗄声や、両側の反回神経麻痺の場合は、声帯が中央で固定するため、呼吸困難を訴えることもあります。また副甲状腺機能低下症による低カルシウム血症などが挙げられます。


●放射線治療

甲状腺悪性リンパ腫、未分化がんで選択されます。


●放射性ヨウ素内用療法(内照射療法)

甲状腺がんがヨウ素を取り込む性質を利用して、放射性ヨウ素を内服し、がん細胞に放射線を取り込ませ、いわばがんに直接放射線を照射する方法です。術後の再発予防として、あるいは遠隔転移のある場合の治療として選択されます。周囲への被ばくを避ける設備が必要であり、国内では実施できる施設が限られています。


●薬物療法

〈抗がん剤治療〉……甲状腺悪性リンパ腫で適応されます。また、未分化がんで、ほかの治療法の効果が見込めない場合にも選択されます。多くは複数の抗がん剤を組み合わせて行われます。

〈TSH抑制療法〉……手術後、再発リスクの高い場合に行われます。TSHによってがん細胞が活性化するため、TSHの分泌を抑えて再発リスクを減らします。

〈分子標的薬〉……再発、転移例で、ほかの治療法の効果が期待できない場合に行われます。レンバチニブ、ソラフェニブ、バンデタニブが用いられます。

監修

医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長

富田益臣

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