副甲状腺がん
ふくこうじょうせんがん

最終編集日:2024/3/26

概要

副甲状腺(上皮小体)は、頸(首)部の前面にある甲状腺の近くにある、米粒大の器官です。原則として、上下二対(計4個)あります。

副甲状腺は「副甲状腺ホルモン(PTH)」を分泌し、カルシウムの濃度を調節しています。副甲状腺の腫瘍には副甲状腺の1腺のみが腫大する腺腫(せんしゅ)、全腺が腫大する過形成、そしてがんがあります。副甲状腺ホルモンの産生臓器である副甲状腺の腫瘍化は、そのほとんどがPTHの自律的な過剰分泌を伴い、副甲状腺機能亢進症をきたすことが多く「高カルシウム血症」となる場合が多いです。ちなみに、がんの発症頻度は全がんの0.005%頻度で非常にまれながんといえます。好発年齢は40~50代、男女差はないといわれます。

原因

原因はまだ明らかにされていません。家族性孤立性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症顎腫瘍症候群などの遺伝性の機能亢進症と関連して発症するものもあります。

副甲状腺

症状

頸部の腫れがみられます。多くはPTHの過剰分泌による「原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)」の状態となり、高カルシウム血症の症状が現れます。初期には、イライラ感、倦怠感、食欲不振、吐き気・嘔吐、胃痛などが起こり、さらにのどの渇き、多尿、便秘、筋力の低下などがみられるようになります。

また、高カルシウム血症がつづくと骨の脆弱性や尿路結石、腎結石を併発することがあります。併発した場合は骨折しやすくなり、腰痛や腹痛などが起こります。

検査・診断

副甲状腺腫瘍の診断には、血液検査による高カルシウム血症の確認と、画像検査による腫瘍の部位確認、高カルシウム血症による骨の変化や尿路結石の有無などの確認を行います。頸部の腫瘤(腫れ、しこり)、あるいは高カルシウム血症を疑う症状がみられたら、血液検査や尿検査で血清カルシウム、PTH値、尿中カルシウム濃度などを調べます。

副甲状腺がんでは、著明な高カルシウム血症(13mg/dL以上)を示すことが多いです。副甲状腺は小さく、甲状腺の後ろ(背中側)にあるため、画像検査で捉えにくい場合もあります。頸部の超音波(エコー)検査、CT、造影CT、シンチグラフィ(アイソトープ検査)、FDG-PETなど、複数の画像検査を用いてがんの場所、大きさ、転移の有無などを診断します。がん細胞を包む被膜の破損による播種(細胞がばらまかれる)のリスクが高いため、穿刺吸引細胞診などは行われません。そのため、腫瘍の良性・悪性の診断はむずかしく、手術による切除後の病理検査で確定診断がなされます。

近年、副甲状腺がんと副甲状腺腺腫(良性腫瘍)の鑑別に、パラフィブロミンなど複数のバイオマーカーを組みあわせた検査が有用であることがわかり、普及しはじめています。

なお副甲状腺の一部が本来の位置にない場合、場所の特定に時間がかかることもあります。

治療

治療の基本は、手術による副甲状腺の摘出です。がんなどの腫瘍の退縮効果が証明された薬物などはないため、遠隔転移があっても摘出が第1選択となります。

副甲状腺がんはがんの摘出が不十分であると再発しやすいことから、被膜を破損することなく完全に摘出することが重要とされます。皮膚を切開しての手術が中心ですが、ロボット手術を実施する医療機関も増えています。

手術が第1選択ですが、実際にはさまざまな理由によって保存的治療となる場合も少なくありません。薬物療法の目的は、PTH分泌の抑制、高カルシウム血症の改善のため、そして腎臓や骨の保護のために行われます。ビスホスホネートやデノスマブ(抗RANKL抗体)、エストロゲンとプロゲステロン製剤によるホルモン補充療法、選択的エストロゲン受容体作用薬などの骨粗鬆症治療薬やカルシウム受容体作動薬であるシナカルセトやビタミンDなども用いられることがあります。

また、副甲状腺がんに対する放射線治療の効果は明らかになっていません。

セルフケア

病後

副甲状腺を4個とも摘出した場合には、術後に低カルシウム血症を起こすため、カルシウム製剤やビタミンD製剤を服用する必要があります。再発リスクが高い場合には、定期的な検査を怠らず、経過観察を行います。

監修

医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長

富田益臣

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