濾胞がんろほうがん
最終編集日:2025/12/19
概要
濾胞がんは、甲状腺(のどぼとけのやや下にある、ホルモン分泌腺)にできるがんのひとつです。
甲状腺がんには、乳頭がん、未分化がん、髄様がんなどがありますが、濾胞がんは2番目に多く、甲状腺がんに占める割合は4~5%ほどです。発生時期に大きな年代差はありませんが、女性に多い傾向があります。初期症状は首にしこりを感じる程度です。多くの濾胞がんは進行が非常にゆっくりですが、進行が速く予後が悪いケースもありますので注意が必要です。
原因
濾胞がんは、ほかのがんと同様に原因を特定することのむずかしいがんです。
症状
初期の全身症状は少なく、首にしこりを感じる程度です。そのためしこりが大きくなるか、別の不調が現れない限り気づくことがむずかしいがんです。リンパ節などへの転移は乳頭がんと比較して少ないものの、血流に乗って肺や骨など離れた臓器への遠隔転移を起こしやすい傾向があります。一般的に濾胞がんは甲状腺の切除手術などによって治りやすいがんですが、遠隔転移をすると治療がむずかしくなります。
検査・診断
触診では確定できないため、まず頸部の超音波検査が有用です。補助的に血液検査も行います。ほかにも頸部CT検査やMRI検査、骨シンチグラフィ検査などが必要になることもあります。
濾胞がんは、診断に不可欠なしこりの膜や血管への浸潤を細胞診(穿刺吸引細胞診、FNAC)では観察できないため、細胞診だけで良性か悪性かを判別することは基本的にできません。そのため、細胞診では良性の濾胞腺腫と悪性の濾胞がんを合わせて「濾胞性腫瘍」として判定されます。濾胞がんの最終的な診断は、手術で腫瘍部を摘出し、病理組織検査を行ったうえで確定されます。
治療
濾胞がんの治療は原則として摘出手術で、ほかのがんにくらべて摘出しやすいといえます。肺や骨など、ほかの臓器に転移している場合は、甲状腺の全摘手術を行ったうえで「放射性ヨウ素治療」を行います。ただし、転移がある場合は根治がむずかしく、QOL(生活の質)の維持・改善が期待できる場合に限り、放射線治療や転移した部位の切除手術を行うこともあります。
また、従来の抗がん剤治療のほか、新たに分子標的治療薬を用いた治療も行われるようになりました。
セルフケア
予防
濾胞がんに絞ったセルフケアはありません。一般的ながん予防法である禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、適度な運動、適正な体重維持、感染予防などが効果的と考えられます。
自覚症状がない段階で、健康診断などで行われる頸部の超音波検査や、PET検査などで発見されるケースが増えています。
監修
福岡ハートネット病院
井林雄太