萎縮性腟炎
いしゅくせいちつえん

最終編集日:2022/3/30

概要

萎縮性腟炎は、閉経後に女性ホルモンであるエストロゲンや卵胞ホルモンの分泌が低下することによって腟に炎症が起きる病気です。

腟の水分量が減少すると外陰部や腟が乾燥、萎縮して雑菌が繁殖しやすい状態になります。炎症をひき起こし、かゆみや黄色いおりもの、性交痛などの症状が現れます。

通常は女性ホルモンを補充することで改善します。


原因

閉経によりエストロゲンなどの女性ホルモンの分泌が低下することが原因です。

エストロゲンは卵子を成熟させるホルモンとして知られていますが、同時に腟や外陰部の皮膚や粘膜を正常に保つ働きももっているため、エストロゲンの分泌が低下すると、皮下のコラーゲンや皮下脂肪が減少して腟壁が薄くなり、水分の保持機能が低下します。そのため外陰部、腟、子宮などが萎縮し、潤いを維持する分泌液も減少して腟内が乾燥します。乾燥した環境下にある腟粘膜は傷つきやすくなり、雑菌も繁殖しやすくなります。

萎縮性腟炎は閉経後の発症が大半を占めますが、若い世代でも卵巣機能に異常がある場合や、腫瘍などの治療で卵巣を摘出した場合に発症することがあります。


症状

腟や外陰部の痛みやかゆみのほか、腟内が乾燥しやすくなるため傷ができやすく、出血、性交痛などがみられるようになります。

進行すると外陰部が癒着して閉じてしまう場合があります。また細菌などに感染しやすくなり、黄色や緑色のおりものがみられることもあります。細菌の種類によっては悪臭を伴う場合もあります。

カンジダなどの真菌に感染した場合には、白っぽいおりものが見られ、強いかゆみやヒリヒリとした灼熱感などが生じます。


検査・診断

最初に問診が行われ、年齢や患部の状態などを総合的にみて診断します。

検査では、腟鏡を使って腟粘膜の炎症や萎縮を確認します。萎縮性腟炎である場合には点状出血といわれる毛細血管の微小出血がみられます。

細菌や真菌への感染が疑われる場合には、菌の種類を特定するために腟分泌液の培養検査や検鏡検査を行います。子宮がんなどほかの疾患の影響が疑われる場合には、細胞診検査や超音波検査を行い、がんの有無や子宮、卵巣の状態を調べることもあります。


治療

HRTと呼ばれる女性ホルモン補充療法や、エストロゲンの局所投与が行われます。

局所投与には腟座薬を使うのが一般的です。1~2週間程度の投与で軽快するケースがほとんどですが、重症の場合は完治までに1カ月ほどかかることもあります。

症状によっては腟錠やクリーム剤、軟膏剤を使用することもあります。また、細菌などに感染している場合には、ホルモン療法と並行して抗菌薬を使用します。

かゆみが強い場合にはかゆみ止め薬、腟や外陰部のびらん、潰瘍病変があるなど症状が重い場合にはステロイドの塗り薬が処方されることもあります。


セルフケア

予防

萎縮性腟炎の予防には生活のなかで以下の点を心がけましょう。

●ビタミンDを積極的にとる

魚などに多く含まれるビタミンDには腟内の水分量を高める作用があり、乾燥を防ぐ効果があります。

●免疫機能を高める

睡眠をしっかりとり、規則正しい生活、栄養バランスのよい食生活などで免疫機能を高めましょう。

●外陰部はやさしく洗う

外陰部にかゆみなどの症状があっても、強く洗いすぎてはいけません。洗うことによって傷がつき、さらに患部が乾燥する原因になります。


監修

Raffles Medical Clinic Hanoi 婦人科

秋野なな

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