(進行性)筋ジストロフィー
しんこうせい・きんじすとろふぃー

最終編集日:2024/6/24

概要

筋ジストロフィーは骨格筋細胞の壊死と再生を繰り返すことで組織が線維化し、進行性の筋委縮や筋力低下を引き起こし、運動機能をはじめとした、からだの機能に異常をもたらす遺伝性筋疾患の総称です。運動機能の低下がおもな症状ですが、関節の拘縮(こうしゅく)や変形、心筋や呼吸機能の障害、嚥下機能障害などの機能障害や合併症を伴うことがあります。

発症年齢や症状、遺伝形式などに基づき、デュシェンヌ型、ベッカー型、福山型、筋強直性ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィーなど、いくつかの型があります。

もっとも頻度が高いのがデュシェンヌ型で、通常、男児に発症します。発症頻度は、男児出生3000人に約1人とされています。次に頻度が高いのは福山型で、男児にも女児にもみられます。成人で最も頻度が高いのは、筋強直性ジストロフィーで、2100人に1人の頻度とされています。

近年、病気の責任遺伝子(病気の原因となっている遺伝子)が次々と発見され、その原因遺伝子・それから作られるたんぱくに基づいた分類もされるようになってきています。しかし、現在も原因となる責任遺伝子が明らかになっていない疾患もまだ多く存在しています

原因

原因となる遺伝子の変異は、親から引き継ぐ場合と、突然変異によって起こる場合があります。骨格筋の成長・維持にかかわるたんぱく質が失われたり、機能の異常が現れたりして筋細胞が正常に機能しなくなって、変性や壊死を起こします。原因の解明はまだ十分ではなく遺伝子変異が引き起こす障害がどのようなものかの解明が進められています。

症状

筋ジストロフィーに共通する症状として、筋委縮や筋力低下による運動機能障害が現れます。筋肉の変性は骨格筋だけでなく、顔の筋肉や心筋など、全身に及びます。そのため、進行すると呼吸不全や心筋症による心不全を合併するケースも少なくありません。


●デュシェンヌ型……3~5歳時に転びやすく走れないことで気づきます。ほかの病気の血液検査などで、クレアチニンキナーゼ(CK)の値が高い「高CK血症」を指摘されて診断に至ることもあります。10歳頃には歩行困難になり、車いすなどによる生活になります。側彎(背骨が変形する)が現れ、呼吸不全や心筋症による心不全が起きてきます。


●福山型……新生児から乳児期にかけて発症します。顔の筋肉を含む全身の筋力の低下が起こり、哺乳できない、体重が増えない、発達遅滞、高CK血症などで気づきます。年齢が進むにつれて特有の顔貌を示すようになり、近視斜視、眼振などの目の症状、けいれん、呼吸不全、心筋症などが起きてきます。


●ベッカー型……デュシェンヌ型と同じような症状が現れますが、小児期から成人になってから発症します。程度もデュシェンヌ型より軽度といわれます。


●筋強直性ジストロフィー……筋力の低下のほか、手を強く握るなど、特定の動作をすると筋肉のこわばり(筋強直)が起こります。この型では、全身に多彩な合併症を伴うことが特徴で、合併症が運動機能障害よって先に出現することも少なくありません。進行すると認知機能低下、白内障などの目の症状、脂質異常症、心筋障害、不整脈、呼吸不全などが現れます。特徴的な顔貌になり、前頭部に脱毛がみられるのも特徴的です。


検査・診断

運動障害などの筋力の低下がみられたら、家族歴を確認し、血液検査、X線検査、電気生理学的検査(筋電図検査)を行います。血液検査では、筋肉が破壊されることを反映してクレアチンキナーゼ(CK〈CPK〉)やAST(GOT) などが高い値を示すことがあります。遺伝子変異の型を特定するために、遺伝子診断を行い、並行して病状の進行の程度をみるために、心臓、目、咽頭、耳など、合併症状が現れる可能性のある部位も精査します。

筋無力症候群、代謝性筋疾患(ミトコンドリア病など)、炎症性筋疾患(多発性筋炎など)などとの鑑別も行われます。

治療

筋ジストロフィーを根治する治療は現時点ではありません。しかし、デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、ステロイド薬が骨格筋障害の進行を抑えることがあり、また心不全に対してはACE阻害薬やβ遮断薬などを使用することがあります。新しい薬の開発が進められており、エクソン・スキッピング治療薬のビルトラルセンも保険承認されました。

年齢や病状の進行に合わせて、理学療法、装具の使用、リハビリテーションなどを組み合わせて行います。筋力の改善を目的にするのではなく、機能の維持、変形の予防、日常生活動作(ADL)の低下をできるだけ少なくし、残存した機能を最大限に活かせるようにします。

症状が強いときにはそれを軽減するような治療が行われます。たとえば、筋強直に対する抗不整脈薬や抗てんかん薬、不整脈や心不全に対する薬物やペースメーカー、植込み型除細動器(ICD)、呼吸不全に対するフェイスマスクなどを用いた非侵襲的陽圧換気療法、嚥下障害に対する経管栄養、胃ろうの造設なども行われます。

現在、13歳以上の筋ジストロフィーによる心不全に対して、TRPV2阻害薬を投与する先進医療が行われるなど、新しい治療法の研究が進んでいます。

セルフケア

療養中

生活の質(QOL)を可能なかぎり保つためにも、理学療法やリハビリテーションを続けましょう。ただし筋肉に過剰な負荷をかけるのはマイナスになります。医師の指導を受けてから行いましょう。また、転倒を防ぐ工夫(杖やプロテクターの使用、1人で出かけないなど)も忘れずに行いましょう。筋ジストロフィーは、国の難病に指定されています。申請をすると医療費の補助が受けられます。

監修

昭和大学医学部脳神経外科 名誉教授

藤本司

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