聴神経腫瘍
ちょうしんけいしゅよう

最終編集日:2024/6/19

概要

聴神経を包む鞘(さや)に発生する腫瘍で「聴神経鞘腫(しょうしゅ)」「前庭神経鞘腫」と呼ばれることもあります。聴神経は、蝸牛神経(かぎゅうしんけい:聴覚)と前庭神経(平衡感覚)からなっており、ほとんどの腫瘍は前庭神経の鞘から生じるからです。

聴神経があるのは小脳と橋(脳幹の一部)の間にある小さな空間(小脳橋角部)で、聴神経のほかに顔面神経、三叉(さんさ)神経、舌咽(ぜついん)神経など、多くの神経が存在しています。聴神経腫瘍は良性の腫瘍で、大きくなっても悪性腫瘍のように転移することはありません。しかし、増殖すると近くにある神経や小脳を圧迫するため、さまざまな症状が現れます。腫瘍が増大してくると、聴神経と同じ走行で内耳道に入る顔面神経も障害を受け、三叉神経症状、小脳症状、脳幹症状などが出てきます。さらに進行すると水頭症、脳圧亢進症状が現れ、重篤な状態になり、生命にかかわることもある腫瘍です。

30~60代に好発し、男女比は1対1.3程度で女性にやや多く、脳腫瘍全体の約10%を占め、比較的多い腫瘍です。

原因

原因は明らかになっていません。

症状

症状は腫瘍の大きさによって異なります。腫瘍が聴神経に限局している初期の段階では、片側性の聴覚の低下がみられます。電話が聞き取りにくい、高い音が聞こえない、人の声が聞き取りにくいなどが現れます。耳鳴や耳閉感、めまいを伴うこともあります。多くは症状がゆっくりと進行します。腫瘍が大きくなると顔面神経麻痺が現れ、顔面のしびれや神経痛(三叉神経症状)、ふらつき・歩行障害(小脳症状)などが起こります。さらに増大すると脳脊髄液の流れが悪化し、、水頭症の合併で頭痛、吐き気・嘔吐、意識障害などが起こることもあります。

検査・診断

問診で聴神経腫瘍が疑われた場合、CT検査やMRI検査、造影MRI検査を行い、腫瘍の場所、大きさ、周囲の組織への影響などを精査します。脳血管造影検査(アンギオグラフィ)や三次元CTA(三次元CT血管造影法)で血管との関係も調べます。聴力検査、筋電図などの検査も行われます。ほかの脳腫瘍もできやすく、脳腫瘍、小脳の病気、突発性難聴などとの鑑別が必要です。

治療

治療法の選択は、腫瘍の大きさ、症状、年齢、全身状態などを考慮し、一般的には、経過観察、ガンマナイフによる放射線治療、手術による腫瘍摘出から選択されます。

●経過観察

腫瘍径が10㎜以下で、聴力が保たれている場合には経過観察が行われます。半年から1年に1度、MRI検査などで腫瘍に変化がないか、症状に変化がないかなどを確認します。20㎜以下の場合も良好な聴力が保たれている場合は経過観察することが多いと思われます。


●ガンマナイフによる放射線治療

周辺の神経や組織への影響が少なく、腫瘍部分に集中的にガンマ線を照射する治療法です。手術のメスで切除するようにピンポイントに治療できることから「ガンマナイフ」と呼ばれます。

腫瘍径が30㎜を超える場合、治療は不可能です。放射線を照射すると一時的に腫瘍が増大することがあり、また、腫瘍径が20㎜以上では照射後に周囲の神経や小脳を圧迫するリスクがあるため、注意が必要です。治療を受ければ腫瘍が消え去るというわけではありませんが、腫瘍は小さくなるか、腫瘍が成長しなくなるという効果が期待されます。


●腫瘍摘出術(手術)

腫瘍径が30㎜以上であったり、重篤な症状があったりする場合には積極的に手術療法がとられます。手術は、内耳神経や顔面神経を損傷させる可能性があるため、傷つけないようにモニタリングをしながら慎重に行われます。腫瘍が大きくなるほど、手術は困難になりますが、腫瘍の大きさ、患者さんの年齢、全身状態などを考慮して術式が選択されます。

手術とガンマナイフ治療を組み合わせて行うこともあり、手術で摘出できない部分はガンマナイフ治療を行うこともあります。若い世代で発症した場合、合併症のリスクが低い腫瘍は小さいうちの手術がすすめられることもあります。

腫瘍が大きくなりすぎて水頭症や脳圧上昇がみられるときには、緊急で脳圧を下げるためにドレナージを行ったり、頭蓋骨の一部をとる開頭減圧術が行われたりします。

セルフケア

予防

聴神経腫瘍は良性腫瘍で、5年生存率は98.8%といわれます。また進行は緩徐で、1年に1㎜の増大という報告もあるくらいです。しかし、腫瘍が大きくなれば治療は難しくなり、手術の合併症も起こりやすくなります。聴力の異常や耳鳴り、耳閉感などが続いたら、早めに脳神経外科や耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。

監修

昭和大学 医学部脳神経外科 名誉教授

藤本 司

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