線維筋痛症
せんいきんつうしょう

最終編集日:2023/2/6

概要

線維筋痛症(FM)はリウマチ性疾患のひとつで、中年女性に好発します。人口の1.7~2.1%の罹患率で珍しい疾患ではありません。全身の強い痛みとともに多彩な症状が現れ、患者さんの日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)が大きく損なわれる深刻な病気です。また、まれですが10代で発症する「若年性線維筋痛症」もあります。

原因

原因はまだ解明されていません。痛む部位に実際には異常が起きていないのに、脳の痛みを感じる中枢が過剰に反応して、痛みを感じる状態になっていると考えられています。

関連する因子として、身体的ストレス(病気やけが、出産、ワクチン接種など)、心理的ストレス、遺伝的要素、自己免疫の異常な活性化などが挙げられています。

症状

からだのさまざまな部分に、慢性疼痛(関節痛、筋肉痛、軟部組織痛など)や、関節のこわばりが現れるのが特徴です。痛みやこわばりのほか、強い疲労感、睡眠障害、不安、集中力の低下、うつ症状、頭痛、しびれ感、めまい、便通異常、過敏性腸症候群など、多彩な症状がみられます。強い症状がつづくことで生活への影響は大きく、休職に追い込まれるようなケースも少なくありません。

検査・診断

診断の目安として「広範囲な痛みが3カ月以上つづいている」「18カ所の圧痛点(押すと痛いところ)を指で押すと11カ所以上で強い痛みを感じる」などがありますが、圧痛点に関しては、必ずしも11カ所以上必要なわけではありません。また、患者さんが記入する質問票を用いることもあります。

現時点では診断基準として、米国リウマチ学会が作成した診断基準や分類基準が用いられます。重症度の判定には、JFIQ(日本語版FIQ)という評価尺度が用いられます。いずれも米国で作成されたものですが、日本人にも有用だとされています。

線維筋痛症では、血液検査、尿検査、X線やCT、MRIなどの画像検査、脳波などに異常は認められません。ほかの疾患との鑑別のためにこれらの検査も行われますが、器質的な異常がみつからないため、診断は慎重に行われます。

治療

病気の原因やはっきりした病態が明らかになっていないため、いまだ有効な治療法は確立されていません。

まず痛みを緩和し、コントロールする治療が行われます。薬物療法としてプレガバリン(リリカ)などの神経障害性疼痛に効果のある薬剤、痛みを抑制する抗うつ薬、鎮痛作用の強い弱オピオイド系薬剤などを組みあわせて服用します。

薬物療法とともに重要で並行して行われるのは、運動療法(有酸素運動、レジスタンス運動、ヨガ、気功など)や、心理療法(認知行動療法など)などの非薬物療法です。

1年間の完全回復率は2%未満と低いものの、約50%に痛みの軽減効果がみられます。痛みを軽減して日常生活に支障のない状態にコントロールすることを治療のゴールとして、焦らずに取り組むことが必要です。

セルフケア

療養中

痛みの発症や程度には、精神的ストレス、身体的ストレスが大きく関係しています。不安の軽減、生活習慣病の見直しや改善が大事です。

監修

昭和大学 医学部脳神経外科 名誉教授

藤本 司

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