涙嚢炎
るいのうえん

最終編集日:2022/1/11

概要

涙囊とは、目から流れ出た涙が入り込む小さな袋状の器官です。涙囊から鼻へとつづく涙の流れが滞り、涙囊のなかで菌が繁殖し、炎症が起こる病気を涙囊炎といいます。悪化すると涙囊の周りにも炎症が生じ、涙囊の皮膚が赤く腫れ、痛みを伴う場合もあります。

原因

中高年に多く、加齢により発症する病気とみられています。加齢により涙囊に涙がたまりやすくなると、涙囊から鼻にかけての器官に涙が流れなくなり、菌の感染が起こりやすくなります。原因菌はブドウ球菌、肺炎球菌、連鎖(レンサ)球菌、緑膿菌などさまざまです。

また、加齢以外では、花粉症などのアレルギーや点眼薬の副作用などから生じるといわれています。

症状

初期は、目やにが発生したり、涙がたまったりすることが多くなります。進行すると涙で視界がぼやけたり、涙によってまぶたの縁がただれたりします。

さらに炎症が進むと、涙囊の周りの粘膜や皮膚が赤く腫れ、疼痛が出てきます。涙囊内で繁殖した菌の入った涙が逆流し、眼球内に入ると、細菌性眼内炎などを起こすこともあります。最悪の場合、失明に至ります。

検査・診断

涙囊から鼻までの器官が閉塞していないかを確認するため、CT検査での画像診断や、涙管に生理食塩水を注水して鼻に流れるかを調べる涙管通水検査などを行います。

目の表面の涙液量を観察するための細隙灯顕微鏡検査を行ったり、原因菌を確認するために、皮膚から針を刺し、うみを採取して細菌検査を行ったりする場合もあります。

治療

抗菌薬の点滴や内服薬を使って治療します。うみがたまっている箇所には、うみを吸引する涙囊洗浄をくり返し行います。

炎症が治まるまで、涙道の閉塞を防ぐ涙管チューブを挿入し、涙道を広げる手術を行うこともあります。

セルフケア

病後

抗菌薬を長期間使用すると、しだいに菌に耐性がつき、効かなくなります。そのため、感染がおさまった後も再発しないように、涙囊と鼻腔をつなぐバイパスのような新しい通路をつくる手術を行い、根治を促すこともあります。

監修

井上眼科病院院長

井上賢治

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