コロナ下での発達障害児への影響 その2
最終編集日:2022/7/27
●発達障害児への重要な対応 ~見通しをつける、根気よく説明する
自閉症はもちろん大変難しい障害ですが、小さい頃から家族も適切な専門的ケアを受け、適切な環境の中で日常生活の見通しをもち、必要な療育を受けると、自立の力をつけて社会の中でその人らしく過ごせる機会は増えることがわかってきています。
必要不可欠な環境調整の要素に「構造化」があります。具体的には、その日はいつからいつまで何をするという予定を立て、その予定を文字やイラスト、写真などで見える化し、子ども自身が見通しをもてるようにして意欲を引き出すものです。構造化によって、安定した生活を送れるようになり、その方法が今は定着しつつあると思います。
自閉症やその他の発達障害の子どもたちの、見通しがないゆえの一見困った行動は、しっかりとした構造化によって安定します。学校閉鎖の期間にも「今は行けないけど、どうなれば行けるようになるよ」と子どもの理解に合わせてくり返し説明することは大事です。外出制限の中でも家にこもらず、近所でのウォーキングに誘うなどの努力の結果、生活が安定した子どももいました。
●コロナ下での教訓を経て、望まれる学校での構造化
発達障害のある子どもの家庭は、構造化の重要性を助言され、上手に実践している場合も多く、コロナのような不測の事態でも配慮がなされ、地域の福祉サービスの支えもありました。構造化が脆かったのが学校で、いかに多様性に対応できていない体制かが表面化したように思います。
学校現場には、コロナ収束後に元戻りするのではなく、多様性を重んじて多様な選択肢を用意し、しなやかに強く進化していただきたい。「不登校」とレッテルを貼られ、隅に追いやられていた子どもたちも、ひと工夫で一部でも学校生活に参加できます。子ども時代の貴重な時間を無駄にせず、有意義な経験を積む機会を提供してほしいのです。メンタルへルスの専門家のみが不登校児に対応するのではなく、学校で対応可能なことも多々あります。私たちの出番が減るほうがよいのです。学校にいられず、クリニックだけが頼みとなるのはいちばんよくないこと。先進国中、体の健康はトップでも、心の健康は最下位レベルなのが日本。子どもを中心に教育のシステムが変わり、ひいては社会すべてのシステムが子ども中心となることを、期待します。
発達障害の診断は私たちが行いますが、それはインクルーシブ教育のための診断です。診断がついたから学校では対応できないのではなく、その診断をインクルーシブ教育のために役立たせてもらいたいと思っています。
※2022年7月20日時点の内容です。
監修
発達障害クリニック 院長
神尾陽子
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