人食いバクテリア(溶連菌)による感染症が増加

最終編集日:2024/3/18

急激に症状が進行し、致命率も高い「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome:STSS)」の昨年の患者数が941人(速報値)で、過去最多だったことが国立感染症研究所の集計で明らかになりました。今年は197人(2024年2月4日までの集計)の報告があります。どのような病気なのか解説します。


●急速かつ激烈に症状が悪化し、致死率約30%という怖い病気


STSSの原因菌は「溶血性レンサ球菌(溶連菌)」というありふれた細菌で、通常は感染しても外来治療などで軽快します。ところが、まれに細菌が体内(血液や筋肉など)に侵入して劇症の経過をたどることがあり、それがSTSSです。なぜ劇症型に進むのかはまだ解明されていません。高齢者、がんや糖尿病などの持病がある人など免疫機能が低下している人が発症しやすいとされていますが、健康な若い人でも発症することがあります。

初期症状は、のどの痛みや発熱などのかぜのような症状、あるいは手足のはれや痛み(小さな傷や打撲後に起こることが多い)などです。ところが数十時間以内に急速かつ激烈に症状が進行し、肝不全、腎不全、急性呼吸窮迫症候群、播種性血管内凝固症候群、全身性紅斑性発疹、手足の筋肉周辺組織の壊死(えし)などを引き起こして全身状態が悪化します。敗血症性ショックを起こして亡くなることも多く、致死率は約30%です。そのうちの約半数は48時間以内に亡くなるというほど、急激に進行する病気です。


●治療は入院して全身管理のもとで行われる


STSSの診断は、症状、および細菌検査でのレンサ球菌の検出によって行われます。感染症法では5類感染症に分類されています。治療は、入院して全身管理のもとで、ペニシリン系の抗菌薬の投与が行われます。手足の筋肉周辺組織の壊死がみられる場合は、それ以上の広がりを阻止するために手足を切断せざるを得ず、それでも亡くなってしまうことがあります。そのためSTSSは「人食いバクテリア」とも呼ばれています。


●早期の治療が重要! 症状が急変したときはすぐに医療機関へ


急激に症状が進む病気なので早期発見が何よりも重要です。かぜの症状が急変して呼吸が荒くなるなど様子がおかしいときや、手足のはれや痛みがひどくなって発熱したというときには、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。

予防については、劇症化する原因が解明されておらず、患者数が増加している原因もわかっていない現状では、確実に有効な手段はありませんが、溶連菌自体は飛まつや接触で感染するので人込みでのマスク着用や手洗いを心がけましょう。病原体に対する抵抗力が低下しないように食事や睡眠をおろそかにしないことも大事です。


※2024年3月18日時点の内容です。

監修

川崎医科大学 小児科学 教授

中野貴司

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