劇症型の溶連菌と一般的な溶連菌は同じ菌ですか?
「人食いバクテリア」と呼ばれる劇症型の溶連菌と、一般的によくみられる溶連菌は、同じ菌なのでしょうか?

女性/40代
2025/02/10
同じ菌です。溶連菌とは、「溶血性レンサ球菌」という細菌の略称です。この細菌を顕微鏡で見ると、球の形をした菌が数珠のように並んでつながって見えることから「連鎖球菌」と名付けられました。また、「ヒツジ血液寒天培地」という羊の血液が含まれる赤い寒天培地に菌を入れて増殖させると、菌の周囲が薄い赤色に変わることから、血を溶かすことを意味する「溶血性」という言葉もついています。溶血性レンサ球菌はA〜V群まで分類されますが、一般的に溶連菌といえば、A群溶血性レンサ球菌を指します。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)を引き起こす、「人食いバクテリア」と呼ばれる溶連菌も、一般的な溶連菌感染症を引き起こす溶連菌も、同じA群溶血性レンサ球菌です。
一般的な溶連菌感染症というのは、のどに感染して起こる咽頭炎や扁桃炎などのことで、子どもがかかることが多い病気です。のどの痛みのほか、発熱や倦怠感など、風邪と似たような症状が現れますが、抗菌薬(抗生物質)の効果が期待できる病気です。
一方、劇症型は溶連菌が筋肉や筋膜、脂肪組織など、からだの深い組織に入り込み、そこで毒素を産生して組織を破壊します。そのスピードは速く、激烈に症状が進んで手足の筋肉の壊死、腎不全、肝不全、急性呼吸窮迫症候群などを引き起こして全身状態を悪化させます。発症から数十時間で敗血症性ショックを起こして亡くなるケースも多く、致死率は30%といわれています。
同じ細菌なのになぜ、これほど症状の深刻度が違うのか、今のところはっきりとしたことはわかっていません。皮膚や粘膜に傷があったり、免疫力が低下していたりという条件が重なって劇症型を発症するという説や、特定の溶連菌株が強い毒素を産生するのではないかという説などが出ています。病気の解明、および予防法や治療法の確立が待たれます。
回答者
川崎医科大学 小児科学 教授
中野貴司
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