健診・検診を知る

最終編集日:2022/7/29

概要

健診と検診では、目的が少し異なります。
健診(健康診断および健康診査)とは、体の総点検ともいえるものです。自身の健康状態を確認し、生活習慣を見直すことが目的で、一次予防の検査とされています。自治体や職場で行われている定期健診(定期健康診断)や特定健診(特定健康診査、メタボ健診)がこれにあたります。
一方、検診は特定の臓器を検査し、病気を早期発見し、早期治療につなげることを目的とした二次予防の検査として位置づけられています。
健診、検診どちらも健康維持、病気の予防には欠かせない検査で、定期的に受けることが重要です。
なお人間ドックは、定期健診や検診にはない検査項目を選ぶことができ、より精密に臓器の異常や病気の有無を調べる任意の検査です。

特定健康診査(特定健診)

特定健診(特定健康診査)とは、生活習慣病の予防や生活習慣の改善を目的とした健康診査です。
各医療保険(国民健康保険、健康保険組合、共済組合など)に加入している40~74歳の被保険者と被扶養者を対象に行われ、メタボ健診ともいわれています。
メタボとは、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の略で、内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうち2つ以上をあわせもった状態をいいます。放置すると糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病を発症し、動脈硬化が進行していきます。動脈硬化によって血管はしなやかさを失い、やがて心筋梗塞や脳卒中など命にかかわる病気をひき起こします。
特定健診では、危険因子であるメタボリックシンドロームにかかわる検査項目をチェックし、生活習慣病の予防と早期発見・早期治療、生活習慣の改善につなげることを目的としています。


特定健診の基本的な項目

・問診
現在の健康状態や生活習慣(飲酒、喫煙の習慣など)を調べ、検査の参考にします。
・身長、体重、腹囲、BMI(体格指数)
・血圧
・肝機能:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP)
・脂質:中性脂肪(トリグリセリド)、HDLコレステロール、LDLコレステロールまたはnon-HDLコレステロール
・血糖:空腹時血糖またはHbA1c
・尿糖、尿たんぱく


詳細な健診の項目

・心電図
・眼底
・貧血
・血清クレアチニン

定期健康診断

定期健康診断(定期健診)は、労働安全衛生法に基づき、事業者が常時雇用する労働者(パートタイム労働者を含む)に対して行うことを義務づけられている、医師による健康診断です。年1回以上行う必要があり、診断項目は生活習慣病に関する問診や診察、検査を中心に一般的な健康状態を評価する内容となっています。


定期健診項目

・既往歴および業務歴の調査
・自覚症状および他覚症状の有無の検査
・身長、体重、BMI(体格指数)、腹囲、視力および聴力の検査
・胸部X線検査および喀痰(かくたん)検査
・血圧の測定
・貧血検査:赤血球数、血色素量
・肝機能検査:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP)
・血中脂質検査:中性脂肪(トリグリセリド)、HDLコレステロール、LDLコレステロール、
・血糖検査:血糖またはHbA1c
・尿検査:尿中の糖およびたんぱくの有無の検査
・心電図検査


定期健診の項目のうち、医師が必要でないと認める場合に省略できる項目

・身長:20歳以上の場合
・腹囲:40歳未満(35歳を除く)の場合、妊娠中の女性そのほかの者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断された場合、BMIが20未満である場合、BMIが22未満であって自ら腹囲を申告した場合
・貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査:40歳未満(35歳を除く)の場合
・胸部X線検査、喀痰検査

人間ドック

人間ドックは、個人で自由に受けられる健診(健康診断および健康診査)で、法定健診(定期健康診断や特定健康診査)よりも検査項目が多く、各自が気になる症状にあわせて検査内容を選ぶことができるのが特徴のひとつです。
検査項目は、身体計測、血圧測定、心電図検査、眼科検診、聴力検診、呼吸機能検査、胸部X線検査、上部消化管X線検査(もしくは上部消化管内視鏡検査)、腹部超音波検査、血液検査、尿検査、便潜血検査、内科診察を含むことが一般的です。
初めて人間ドックを受診する場合や自覚症状がない場合は、全身の健康チェックができる基本的なコースを選ぶとよいでしょう。
人間ドックは治療ではなく、予防として受けるものなので、健康保険の適用や医療費控除の対象外となります。

がん検診

がん検診の目的は、自覚症状のない時点で早期にがんを発見し、適切な治療を行うことでがんによる死亡を減らすことです。国が推奨するがん検診は5種類で、これらは科学的な方法によってがん死亡率を減少させることが検証されています。


国が推奨する5種類のがん検診

・胃がん検診:50歳以上(※当分の間、胃部X線検査については40歳代に対し実施可)
/2年に1回(※当分の間、胃部X線検査については年1回実施可)
・子宮頸がん検診:20歳以上/2年に1回
・肺がん検診:40歳以上/年1回
・乳がん検診:40歳以上/2年に1回
・大腸がん検診:40歳以上/年1回


がんは、かつては不治の病といわれましたが、現在では早期発見、早期治療をすれば、その多くは治る可能性が高い病気になりました。
がん検診は、各市区町村において健康増進法のもとに行われています。検診費用の多くを公費でまかない、一部の自己負担でがん検診を受けることができます。また職場や加入する健康保険組合などでもがん検診を実施している場合があります。

婦人科検診

女性特有の病気を早期発見することを目的とした検診のことです。
一般的には、内診、子宮頸がん検査、子宮体がん検査、乳がん検査などが検査項目となります。
婦人科系の病気は、自覚症状が現れにくいものが多いため、進行する前の段階で見つけて治療を行うことが重要です。早期発見・早期治療のためにも検診は定期的に受けることが大切です。
市区町村の自治体で行われる がん検診においても、子宮頸がんや乳がんの検診が実施されています。

歯周病検診

歯を失う原因となる歯周病の予防と、早期発見のために実施されている検診です。自治体で行われる歯周病検診では問診と口腔内検査が行われ、特定健診(特定健康診査)と同時に実施されている場合もあります。個人で歯科医院などで受ける場合は、各施設により検査項目が異なります。
おもなものでは、歯と歯肉(歯ぐき)のすき間にある歯周ポケットの深さを調べるプロービング検査、歯を支える骨の状況を調べるX線検査、歯周病の原因となるプラーク(歯垢)の状況を調べる検査などがあります。
歯周病の初期には自覚症状がほとんどないため、定期的に検診を受けることが大切です。

骨粗鬆症検診

骨粗鬆症は、加齢や閉経により骨密度(骨を構成するカルシウムなどのミネラルがどれだけ詰まっているかを示すもの)が低下することで、骨がもろくなって骨折しやすくなる病気です。最近では骨密度低下を早期に見つけて治療を始めることで、骨折の予防ができるようになりました。こうした意味でも骨の健康状態を知る骨粗鬆症検診は重要です。
市区町村などの自治体では、40〜70歳の女性を対象に5年ごとの節目の年齢で行うことが推奨され、実施している場合は地域の保健センターや保健所、指定医療機関で受けることができます。
おもな検診内容は、運動習慣や食事内容を書き込む問診票の提出と測定機器による骨量測定です。検査結果によっては栄養・運動指導が行われ、よりくわしい検査が必要な場合は医療機関への紹介が行われます。

肝炎ウイルス検査

肝炎ウイルス検査は、肝炎予防そして肝炎の早期発見を目的としています。
ウイルス性肝炎は、感染した状態を放置すると慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんに進行するリスクがあります。その肝臓がんの原因の約8割がB型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)です。肝臓は沈黙の臓器といわれ、自覚症状がほとんどなく進行し、気づいたときには悪化していることが少なくありません。
B型肝炎ウイルスは、HBs抗原と呼ばれるB型肝炎ウイルスの外側のたんぱく質を検出する検査で判定します。
C型肝炎ウイルスは、血液中にHCV抗体があるかどうかを調べるHCV抗体検査と、HCVの遺伝子を調べるHCV-RNA検査を併用して行います。
検査方法は血液検査で、自治体や職場などの健診に組み込まれている場合もあります。一般の医療機関でも受けられますので、過去に一度も受けたことのない場合は、肝炎ウイルス検査を受けることが推奨されています。

監修

寺下医学事務所 医学博士

寺下謙三

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