トキソプラズマ感染症ときそぷらずましょう
最終編集日:2022/4/11
概要
妊娠を希望される人や妊娠中に気をつけていただきたい感染症のひとつがトキソプラズマ症です。
妊娠前に感染した場合は、トキソプラズマ原虫が胎児へ感染することはありません。注意したいのは妊娠中に初感染(抗体をもっていない)した場合です。
母親が感染した時期によってトキソプラズマ症の発生率と重症度が異なるといわれています。妊娠初期に感染した場合、胎児への感染率は低いが重症化しやすく、妊娠後期の感染では感染率は高いが、軽症の場合が多いといわれています。感染しても症状が出ない場合もありますが、流産、死産、また脳や目に障害が出ることがあります。
原因
トキソプラズマ症は、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)というアピコンプレクサに属する寄生性原生生物(原虫)を感染源とし、多くの哺乳類や鳥類にみられる感染症です。
感染経路は、生肉や加熱不十分な肉を食べたり、ペット(とくに猫)の糞便に触れたりすることで感染します。土のなかにも生息しているため、土いじりやガーデニングでも感染することがあります。
症状
感染しても大部分の人は症状が出ませんが、抗体のない妊婦が感染すると胎盤をとおして胎児に感染し、先天性トキソプラズマ症をひき起こすことがあります。胎児へ感染する割合は30%であり、かならず感染するわけではありません。また、胎児に感染した場合に先天性トキソプラズマを発症する割合は、最大でも約20%と高くはありませんが最悪の場合、流産や死産に至ることもあります。
先天性トキソプラズマ症を発症すると次のような症状が出ることがあります。
・低出生体重
・脳性麻痺
・髄膜炎
・精神発達の遅れ
・運動機能発達の遅れ
・黄疸・発疹
検査・診断
血液検査でトキソプラズマ抗体の有無を調べます。感染が気になる場合は、主治医に問い合わせてみましょう。妊婦全員が受ける検査ではありませんが、希望すれば妊娠初期の血液検査でトキソプラズマ症の検査をすることができます。
妊婦の感染が疑われる場合、抗体検査で陽性の場合、IgM抗体やIgG抗体などの値をくわしく検査したうえで診断が行われます。
治療
アセチルスピラマイシンという抗生剤を早期から服用することで、胎内感染率を約60%下げることができるといわれているため、感染が疑われる妊婦には、なるべく早期から同薬の服用を始めます。
胎児への薬による危険性は報告されていませんが、羊水検査によって胎内感染の診断が確定した場合では効果がありません。
セルフケア
予防
妊娠中は、生肉を食べる、野良猫に触る、土いじりをするなどは避けましょう。
トキソプラズマ症の予防には以下のことに注意しましょう。
・肉料理は十分に加熱する
・果物や野菜は調理前にしっかり洗う
・肉や野菜などに触れた後はよく手を洗う
・ガーデニングや畑仕事をする際は、マスクや手袋を使い、終わった後はしっかり手を洗う
・ペットの排泄物を処理する際は、手袋を使い、終わった後は手をよく洗う
監修
JR東京総合病院 産婦人科 医長
松浦宏美
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