老人性難聴

ろうじんせいなんちょう

最終編集日:2023/3/13

概要

老人性難聴(加齢性難聴)は、加齢によって聴力が低下し、耳が聞こえにくくなる状態を指します。一般的に難聴には、耳の内部(外耳・内耳)の異常によって音が伝わりにくい「伝音難聴」と、内耳や脳に異常があって音を十分に感じ取れない「感音難聴」があります。老人性難聴はこのうち、感音難聴に分類されます。通常は左右どちらにも症状が進みます。

原因

内耳には蝸牛(かぎゅう)と呼ばれるかたつむりの殻のような渦巻き形の管があります。蝸牛の内側の表面には有毛細胞という細かい毛のある細胞があり、蝸牛の内部はリンパ液で満たされています。音の振動が伝わるとリンパ液が揺れ、その揺れをキャッチしてさらに聴神経に伝えるのが有毛細胞の役割です。

老人性難聴は有毛細胞が加齢によって減少することで、音を感じ取りにくくなります。また、周囲にある大脳に至る神経の情報伝達にかかわる細胞の変性や減少も、老人性難聴の原因と考えられます。加齢によるこのような変化はある意味、仕方のないことですが、リスクファクターとして、高血圧症、糖尿病、心血管障害、脳血管障害、喫煙、騒音曝露(ばくろ)、遺伝的要因などが難聴の発症や進行を促すとされています。

症状

老人性難聴の聞こえ方の特徴として、次のようなものが挙げられます。


●高音域(電話の呼び出し音、体温計などの電子音など)が聞き取りにくい

●言葉が聞き取りにくくなり、会話中に聞き返したり、的外れな反応をすることが増える

●騒がしい環境での会話はさらに聞き取りにくい

●言葉の内容を理解するのに時間がかかるため、相手が早口だと聞き取れない

●子音が聞き取りにくく、聞き間違えが増える(とくにカ行、サ行、ハ行を含む言葉)

●集中していないと言葉を聞き取りにくく、病院などでの呼び出しで自分の名前を聞き逃す

検査・診断

医師との問診で、どれくらい会話が聞き取れるかはおおよそわかりますが、さらに聴力測定を行い、どの周波数が聞こえないかなど、難聴の程度や状態をくわしく調べます。そのほか、高齢者に起こりやすい滲出性中耳炎、耳垢栓塞(たまった耳垢が耳を塞ぎ、聞こえにくくなる)との鑑別も行われます。

治療

●補聴器の使用について


加齢による有毛細胞などの減少は、進行を抑えたり、減少した細胞を増やすことはできません。難聴の程度が生活に支障をきたすようなら、補聴器の使用を考慮します。補聴器は年々進化し、聞こえの状態や使う人のライフスタイルや希望にあわせて、さまざまなタイプが登場しています。アクセサリーのような色やデザインで、見た目を気にする人でも使いやすいものもあります。

注意すべきは「補聴器は入手したら終わり」ではないことです。自分に合った補聴器にするために、購入から3カ月程度は微調整が必要になります。また、この期間に専門家の指導を受けて補聴器に慣れるトレーニングをつづけましょう。

セルフケア

予防

●老人性難聴を放置すると……


近年、難聴は認知症やうつ病の危険因子のひとつであることが明らかになり、とくに「認知症の予防できるリスクのなかで、最大のものが難聴」といわれています。また、難聴があることで人とコミュニケーションがとりにくくなり、ひきこもりや社会的孤立を起こしやすい、外出時に周囲の状況や危険を察知しにくい、緊急時の警報などを捉え損ねるなどのリスクも高くなります。

それほど不自由を感じていない、受診するのが面倒などと思わずに、早めに耳鼻咽喉科を受診して聞こえの状態を把握し、補聴器の使用をすすめられたら前向きに検討しましょう。補聴器を適切な時期に使い始めることが、補聴器の効果を高めることにつながります。


●周囲の気づき


老人性難聴が始まっていても、あまり不自由を感じない場合は難聴の自覚がないことが多いようです。また、難聴を認めたくない気持ちがあって、そのままにしているケースもみられます。周囲が老人性難聴に気づくのは、次のようなことがきっかけになります。

電話で通話の相手が大声を出したり、何度も言い返すことが増えてきた/テレビやラジオの音量が以前にくらべて大きくなった/周りが騒がしい環境で呼びかけても気づかないことが増えた/着信音に気づかないことが増えた/話し声が大きくなった


家族は「年だからしょうがない」ととらえずに、耳の病気が原因になっている場合もあり、受診して適切な治療を受けることをすすめましょう。

監修

耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック 院長

大河原大次

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