前庭神経炎

ぜんていしんけいえん

最終編集日:2022/4/20

概要

からだのバランスをつかさどっているのは、内耳にある前庭という部分です。前庭神経が、加速や重力の方向などを感じる耳石器(じせきき)と、頭部の傾きや回転などを感じる三半規管から得た情報を脳に伝えることで、姿勢保持が可能となります。

内耳や前庭神経に異常があると、突発的に強い回転性のめまいや嘔吐などが起こります。かぜなどの感染症をきっかけに発症することが多い病気です。


原因

ウイルス感染などが要因となると考えられていますが、発症のメカニズムは不明です。

耳は、外側から外耳、中耳、内耳という構造をしており、内耳には音と平衡感覚のセンサーといえる蝸牛、耳石器、三半規管があります。ここで得た聴力に関する情報を脳に伝えるのが蝸牛神経で、平衡感覚に関する情報を伝えるのが前庭神経です。

前庭神経は上前庭神経と下前庭神経で構成され、上部に位置する上前庭神経がウイルス感染の影響を受けやすくなっています。


症状

前庭神経炎では、突然、まわりや自分自身がぐるぐる回っているような強い回転性のめまいが生じます。めまいは安静にしていてもつづき、数日間にわたって持続することもあります。また、回転性のめまいの影響で、多くの場合、吐き気や嘔吐、眼球が激しく動く「眼振」を伴います。強い症状が急激に起こるため、病院に緊急入院するケースもあります。

前庭神経炎のほかに、強いめまいを生じる病気に脳卒中があります。前庭神経炎では頭痛、感覚障害、四肢麻痺、意識障害などは起こりませんが、こうした症状を伴うめまいは、脳卒中の可能性があるため注意が必要です。



検査・診断

聴力検査のほか、回転性めまいの発作時に認められる眼振をみるため、頭位眼振検査で、フレンツェル眼鏡と呼ばれる厚い凸レンズ付きの眼鏡や、赤外線CCDカメラを装着して、頭を振ったときに眼振が起こるかを確認します。

ほかにも、外耳に冷水と温水を入れて反応をみる温度刺激試験(カロリックテスト)や、耳の後ろに電気刺激を加えて、どのくらい体が傾くかを調べる前庭誘発筋電位検査を行い、前庭神経機能の低下を確認します。

脳卒中などがないかを調べるために、CT検査やMRI検査などが行われることもあります。


治療

前庭神経炎の治療は、おもに鎮暈剤(ちんうんざい)が内服および点滴で投与されます。また、吐き気や嘔吐が強い場合は、制吐剤の投与を行い、脱水が起きているときは点滴による水分補給をします。症状によっては安静目的で入院することもあります。安静にしたうえで、薬による治療とリハビリテーションを行います。

薬はめまい感や吐き気を抑えるために鎮静剤、炎症を抑えるためのステロイド剤(内服か注射)が使われます。吐き気や嘔吐で、経口摂取ができない人には、水分補給のための点滴も行います。

このほか、激しいめまいを抑える抗めまい薬や、神経への血流を促す内耳循環改善薬、不安感をやわらげる抗不安薬などを用いる場合もあります。


セルフケア

病後

前庭神経炎では、大きなめまいの発作は一度きりのことが多く、その後は改善します。

ただし、強いめまいが消えても平衡感覚が乱れることがあります。医師の指示にしたがってリハビリテーションを行うことが必要になるケースもあります。症状が改善しても定期的に検査を行うことをおすすめします。


監修

耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック 院長

大河原大次

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