真性赤血球増加症・真性多血症しんせいせっけっきゅうぞうかしょう・しんせいたけつしょう
最終編集日:2024/6/8
概要
血液の産生が過剰になる病気で「骨髄増殖性腫瘍」に分類されます。血小板や白血球も増加しますが、赤血球がもっとも多く増加します。年間の発症率は10万人におよそ0.2人で、60代に発症のピークがあり、男性にやや多い傾向があります。
原因
血液細胞の増殖にかかわる酵素(ヤヌスキナーゼ2:JAK2)の遺伝子に変異が起こることが原因です。変異によってJAK2が活性化し、血液細胞の産生が亢進してしまいます。なぜ遺伝子変異が起こるかはわかっていません。
症状
頭痛、頭重感、耳鳴り、めまい、赤ら顔、目の充血、視力障害、皮膚掻痒(そうよう)感などがみられます。これらは赤血球量の増加で血液の粘稠度(粘度)が上昇したために起こる症状です。
症状があっても血液の異常とは思わずに、約50%が健康診断などの血液検査で見つかるとされています。
検査・診断
血液検査と、骨髄の生検による病理組織検査が行われます。遺伝子検査でJAK2の変異を確認します。①赤血球のヘモグロビン、ヘマトクリット値の上昇、②骨髄生検での血球の過形成異常、③JAK2変異の3点があれば、確定診断とします。
ほかの病気が原因で赤血球の増加が起こる二次性赤血球増加症や、慢性骨髄性白血病などとの鑑別を行います。
治療
血液の粘稠度が高まるため、血栓(血の塊)ができやすくなることから、血栓症のリスクを低下させることが治療の目標になります。おもに以下のような治療が行われます。
●瀉血(しゃけつ)療法
粘稠度の上昇を抑えるために瀉血(血液を抜き取る)を行います。まず、1回250~400mLを1日おきに、あるいは200~300mLを週2回程度、瀉血します。
●低用量アスピリンによる抗血小板療法
血栓症の予防効果があるアスピリンを用います。通常は瀉血療法に併用されます。
●化学療法
血液細胞の増殖を抑制する効果のある抗がん剤(ヒドロキシウレア)が第一選択になります。とくに60歳以上で、脳梗塞や心筋梗塞、深部静脈血栓症などの血栓症の既往がある、血栓症の高リスク群や、症状が強い場合、脾腫(脾臓が腫れる)を合併している場合に適応されます。インターフェロンが用いられることもあります。
●分子標的薬
ヤヌスキナーゼの働きを阻害する、JAK阻害薬(ルキソリチニブ)という分子標的薬を用います。化学療法で効果がみられない場合に適応されます。
セルフケア
病後
真性赤血球増加症の予後は、血栓症の予防に努めれば比較的良好と考えられています。
しかし、骨髄線維症、急性白血病に移行するものが10~20%にみられるため、60歳未満での発症では、造血幹細胞移植を検討する場合もあります。
監修
東海大学 医学部血液腫瘍内科 教授
川田浩志
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