血栓性静脈炎
けっせんせいじょうみゃくえん

最終編集日:2025/2/3

概要

静脈にできた血栓(血のかたまり)によって炎症が起こる病気です。

血栓性の静脈炎は、表在静脈(皮膚に近く浅いところにある静脈)に起こる「血栓性静脈炎」と、からだの深部に起こる「深部静脈血栓症」に区別されています。深部静脈血栓症は肺塞栓症(エコノミークラス症候群)などをひきおこすため、より重篤な病状と考えられます。ここでは血栓性静脈炎について説明します。


原因

静脈内に血栓ができることが原因です。血栓は誰にでも起こり得ますが、Virchow(ウィルヒョウ)の3徴といわれる、①凝固能の亢進、②血管内皮障害、③血流の停滞の3つが生じるとできやすくなるとされています。

①凝固能の亢進は、がんなどの悪性疾患、抗がん剤や経口避妊薬などの使用、②血管内皮障害は、打撲などの外傷、ベーチェット病やIgG4関連疾患など、③血流の停滞は長時間の安静などで生じます。


症状

おもに下腿(ふくらはぎ)の皮膚に発赤、痛み、腫れが現れます。病変部は触ったり押したりすると痛みが強くなります。血管(静脈)に沿って、しこり(硬結)ができることもあります。

通常は10日~数週間ほどで自然に治りますが、再発しやすいのが特徴です。再発は同じ場所に起きたり、別の場所に起きたりします。再発をくり返すと、しこりが板状に広範囲に出現し、皮膚に潰瘍ができることもあります。

まれに深部静脈血栓症をひきおこすケースもあり、その場合は病変部の強い腫れ、むくみ、皮膚が青紫色になる、疼痛が急激に現れます。


検査・診断

視診・触診のほかに、血液検査、超音波検査、造影CT検査、造影MRI検査が行われます。血液検査では血液の凝固能などを調べます。

血栓性静脈炎の診断とともに、深部静脈血栓症に進展していないか、肺などに塞栓症を起こしていないかも確認します。


治療

病変が現れた場所に湿布を貼り、安静を保ちます。痛みが強い場合は非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を服用します。痛みが強くなければ、弾性包帯や弾性ストッキングを用いて血流を促すこともあります。多くは数週間で改善されます。

症状が強い、病変部が大きいなどの場合や、上記での効果がみられない場合は、抗凝固薬や抗血小板薬による薬物療法で、血栓ができるのを防ぎます。皮膚潰瘍には、外用薬、抗菌薬を用い、病変部が大きい場合には手術が行われることもあります。

他疾患が原因の場合は、原因疾患の治療を同時に行います。


セルフケア

病後

血栓性静脈炎は一度治まっても再発しやすい病気です。病状が進行すると難治性になり、治療の負担も大きくなります。経過観察を怠らず、適切なタイミングで治療を受けるようにしましょう。


血栓性静脈炎は循環器内科、形成外科、心臓血管外科、あるいは下肢静脈瘤に特化して診る静脈瘤クリニックなどで診察を受けることができます。


監修

神奈川県立循環器呼吸器病センター 循環器内科 部長

福井和樹

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