寒い朝は要注意!「早朝高血圧」に注目
最終編集日:2025/12/8
日本高血圧学会は新たに「高血圧治療・管理ガイドライン2025」を発表し、朝の最高血圧は130mmHg未満を目標とする「血圧朝活キャンペーン」を全国展開しています。
朝の高血圧は脳卒中(脳梗塞、脳出血)や冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)の発症リスクを高めます。特に冬の朝は血圧が上がりやすいので注意が必要です。
●早朝高血圧のリスクとは?
通常、血圧は寝ている間は低く、朝起きると上昇し、夜になるにつれて下降していきます。とくに朝の血圧が急激に上昇する場合があり、これを「早朝高血圧」と呼んでいます。早朝高血圧が問題なのは、最高血圧が130 mmHgを超えると脳卒中や冠動脈疾患の発症リスクが高まることが知られているからです。実際、脳梗塞、心筋梗塞などの発症は、早朝や午前中の時間帯に多いこともわかっています。
このような早朝高血圧について、気づかないまま暮らしている人が相当数いると思われます。それは、早朝高血圧があっても昼間に血圧を測ると正常値を示すことがあったり、そもそも血圧を測定する習慣がない人もいるためです。
●朝の血圧は最高血圧130未満を目標に
2025年8月にガイドラインが変わり、全年齢における降圧目標値が「130/80mmHg未満」となりました。年齢にかかわらず、診察室で測る血圧は130/80mmHg未満、家庭で測る血圧は125/75mmHg未満を目標にするということです。なお、高血圧の診断基準(診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上)は従来どおりです。
早朝高血圧の危険性を広く知らせるために、日本高血圧学会は「早朝高血圧徹底制圧宣言2025」を発表しました。「血圧朝活キャンペーン」という啓発活動を通じて、全国民に対して早朝高血圧の発見と抑制を呼びかけています。
●朝の血圧測定と寒さ対策が大切
早朝高血圧を発見するには、朝の血圧を、毎日ほぼ同じ時刻に測定することが重要です。起床後1時間以内(朝食をとる前)、トイレをすませて1〜2分座って安静にしたのちに測定し、記録をつけます。最高血圧が130mmHgを超えることが続くようであれば、かかりつけ医や内科または循環器内科を受診しましょう。
冬に血圧が上がりやすくなるのは、寒さによって血管が収縮し、血液の流れが悪くなるためです。暖房の効いた室内とそうではない室内との温度差が大きい場合も、自律神経が刺激され、急に血圧が上がることがあります。そこで朝の急激な血圧上昇を防ぐには、寒さ対策が重要です。冷え冷えとした室内で起床して着替えたりしていると、血管が収縮して血圧の急上昇を招きかねないので、エアコンのタイマー機能を使って起床時の室内が少なくとも18℃以上、高齢者では22℃以上に温まるようにするとよいでしょう。夜間や起床後すぐにトイレに行くときは、パジャマの上にカーディガンなどを羽織って靴下をはくようにするなど、保温につとめましょう。
また、急に起き上がると血圧が急上昇しやすくなるので、起床時はゆっくり起き上がるようにすることも大事です。
減塩を心がけた食事、適度な運動、良質な睡眠、ストレス管理なども高血圧予防につながるので、ぜひ生活習慣を振り返って改善すべき点があれば改善しましょう。
監修
自治医科大学内科学講座 教授/日本高血圧学会 理事長
苅尾 七臣