脳ドックでわかる脳疾患とは

最終編集日:2025/10/27

ある日突然、自身や家族の日常を変えてしまう脳の病気。

脳卒中をはじめとする脳血管疾患は、日本人の死亡原因の上位に位置しています。2023年の脳血管疾患による死亡者数は約8万〜9万人でした。

脳血管疾患は自覚症状のないまま進行し、突然発症するケースも少なくありません。だからこそ、早期発見と予防のために「脳ドック」が重要なのです。


●脳ドックとは?

脳ドックは、MRIやMRAを用いて脳や血管の状態を調べる検査です。MRIは脳の断層を撮影し、MRAは脳の血管を映し出すことが可能です。さらに、頸動脈超音波(エコー)検査では、首の血管の状態を確認したり、心電図や血液検査などを組み合わせることもあります。

検査の内容によって異なりますが、数時間から半日ほどで検査は終了します。


●脳ドックでわかる疾患と年代別リスク

<脳動脈瘤>

脳の血管の壁が弱くなった部分が、風船のようにふくらんだもの。破裂すると「くも膜下出血」を引き起こします。

くも膜下出血は40代以降で多く発症します。発症すると致死率はおおむね30〜50%とされており、命をとりとめても重い後遺症が残ることがある極めて危険な病気です。

<脳梗塞>

脳の血管が詰まり、血液や酸素が十分に届かず脳細胞が壊死してしまう病気です。梗塞が起きた脳の場所により、麻痺や言語障害、視覚障害など、さまざまな症状が現れます。

50代以降で増加しますが、稀に、10代や20代でも発症する「若年性脳梗塞」も報告されています。

<脳微小出血>

自覚症状のないごくわずかな出血ですが、将来の脳梗塞や脳出血につながることもあります。

<無症候性脳梗塞>

症状に気づかないほどの小さな脳梗塞で、高齢者によく見られます。放置すると脳卒中や認知症のリスクが高まります。

<頸動脈の狭窄>

首の動脈が狭くなる状態で、脳梗塞のリスク要因のひとつです。無症状のことが多いですが、脳ドックで早期に把握し、生活習慣病の改善や薬物治療につなげることが大切です。


●脳の病気は早期発見が要

脳にかかわる病気は、一度発症すると命にかかわり、助かっても重い後遺症が残る可能性があります。一方、無症状のうちに見つけることができれば、生活習慣病の改善や薬物治療によって予防が可能です。

脳ドックは「安心を得る検査」であり、突然死のリスクを減らす手段でもあります。


40歳を迎えたら、一度、脳ドックの受診を検討しましょう。

早期発見と予防の積み重ねが、自身や家族の未来を守ることにつながります。


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監修

藤田医科大学ばんたね病院 脳神経外科 教授

加藤庸子