下痢など腸の不調が続くのは過敏性腸症候群?

最終編集日:2025/7/21

過敏性腸症候群(IBS)は、消化器に炎症や潰瘍などの異常がないにもかかわらず、腹痛や下痢・便秘などの症状がみられる病気です。

発症する原因はまだ解明されていませんが、感染性腸炎にかかり、その治癒後になりやすいことが知られています。また、過敏性腸症候群はもともとの体質や、ストレスの度合いなど複数の因子が複雑に絡み合って症状が現れ、いったん症状が和らいでもくり返し再発し、経過が長いことが特徴です。症状によっては日常生活に支障をきたすことがあります。


●過敏性腸症候群の症状の特徴

典型的な症状は、下痢や便秘、下痢と便秘が交互に起こるといった排便障害です。そのほか、腹痛、腹部の不快感、おなかが鳴る、腹部のガスによるおなかの張りなど、さまざまな症状がみられます。これらは、おもに大腸の過度の緊張により動きや働きが低下していることが背景にあるといわれています。

また、不安やストレスなどの心理的な変化、高カロリーや脂肪の多い食事、コーヒーや紅茶、乳製品などのとりすぎ、指示量以上の下剤の使用などにより、消化管が過度に刺激されると症状を引き起こすこともあります。試験や面接など一過性の強いストレスがあるときに起こる下痢の症状とは違い、過敏性腸症候群はストレスから解放されても自覚症状が持続します。誘因となる刺激は同じでも、過敏性腸症候群では大腸が強くけいれんを起こすことで腹痛を感じ、過度の緊張や不安によって腸の動きが過敏になり、下痢や便秘を起こします。さらに、自覚症状を過度に心配すると、症状が長引くこともあります。


●過敏性腸症候群を診断するための検査

下痢などの症状を引き起こしている原因を特定するためには、便や血液検査をはじめ、胃や大腸の内視鏡検査バリウム検査などを行う必要があります。精神的なストレスによって起こる慢性的な便通異常や腹痛の症状も、まずは各種検査を行い、ほかの病気がないことを確かめたうえで過敏性腸症候群と診断されます。


●治療の中心は生活習慣の改善

治療は、生活習慣の改善が中心となります。腸を整え、できるだけストレスをため込まないようにするには、規則正しい生活、十分な睡眠と適度な運動を心がけることが大切です。食事は、暴飲暴食を避け、消化管を刺激するような高脂肪のものや、香辛料、アルコール、コーヒーなどは控えましょう。

なお、症状によっては、薬物療法を行います。一般的には、整腸剤や下痢止め、抗不安薬などが処方されます。


●腸のコンディションを整えるセルフケアとは

腸のコンディションを整えるために、次のようなセルフケアが有効といわれています。

〇早寝早起き

毎日の生活リズムをできるだけ一定に整えることが大切です。

〇朝食後に排便の時間を確保

毎日決まった時間にトイレタイムを確保するようにしましょう。

〇適度な運動の継続

腸のぜん動運動を促すために、適度な運動を習慣化しましょう。

〇バランスのとれた食事を1日3食とる

少食や偏食などが続くと便量が減り、便通も乱れやすくなります。

〇過度な刺激になる飲食は控える

辛い食べ物やコーヒーなどの刺激物は控えめにするとよいでしょう。

〇胃腸の調子に応じて食品を選択

下痢のときは乳製品や冷たいもの、消化の良くないもの、油の多い食事を避けることが大切です。一方、便秘のときは繊維の多い食物や水分を多くとるとよいでしょう。

〇十分な休養と睡眠を

ストレスなど精神的な要素が影響するため、ゆっくりする時間をつくりましょう。また、質の良い睡眠を得られるような生活習慣や環境を整えることが大切です。


さらに、長時間同じ姿勢でいることは、さまざまな不調の原因になります。デスクワークで座りっぱなしの時間が多い人は、時々立ち上がって歩いたり、深呼吸をしたり、ストレッチを行うなど、適度に心身の緊張を緩めるよう意識しましょう。これらは腰痛の予防にも役立ちます。

なお、過敏性症候群の症状が長引くときは、胃腸科や消化器内科を受診して、医師に相談することをおすすめします。


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監修

保健同人フロンティアメディカルチーム