発汗で起こる「コリン性蕁麻疹」とは?

最終編集日:2025/5/19

蕁麻疹(じんましん)とは皮膚に膨疹 (ぼうしん:膨らんだ発疹)が現れる病気で、原因や症状の現れ方はさまざまです。「コリン性蕁麻疹」は、発汗をきっかけにして発症するもので、子どもや若年層に多く見られます。


●発汗をきっかけに膨疹が出現する

コリン性蕁麻疹は、運動や入浴などでからだが温まったとき、暑い環境におかれたとき、緊張やストレスにさらされたとき、辛い食べ物を食べたときなどに汗をかき、それがきっかけとなって発症します。1〜4㎜程度の小さくて赤みのある膨疹が出現し、かゆみを伴うのが特徴です。膨疹同士がくっつくことはありますが、ほかの種類のじんましんのように大きな平べったい膨らみが出現することはありません。チクチク、ピリピリした痛みが現れる場合も多くあります。膨疹が出やすい部位は、体幹(頭・手足を除く胴体部分のこと)です。出現後、数分から2時間以内に消失するケースがほとんどですが、その後発汗すると再び症状が現れます。発症するのはおもに子どもや若年層で、多くは成長とともに症状が軽くなっていきます。

原因は、ヒスタミン、アセチルコリン(発汗に関与する神経伝達物質)、汗アレルギー、血清因子などが知られています。また、アトピー性皮膚炎を合併するケースも多く見られます。特殊なものでは、汗が出にくくなる「減汗性コリン性蕁麻疹」というものもあります。

まれに、コリン性蕁麻疹から複数の臓器に強い症状が現れる「アナフィラキシー」が起こることがあります。膨疹やかゆみが全身に急に広がったり、息苦しさや動悸、胸の圧迫感、吐き気、意識混濁などが現れたりしたときは、救急車を要請する必要があります。


●頻繁に症状が出るようなら皮膚科へ

コリン性蕁麻疹の症状はすぐに消えるものですが、頻繁に症状が現れたり、かゆみや痛みが強かったりして日常生活に支障があるときは、皮膚科を受診します。一方、症状が軽く、日常生活に支障がなければ、多くの場合、治療をしなくても自然に治まります。

受診のときに症状が出ているとは限りませんので、膨疹が現れている皮膚の写真を撮り、それを持参すると診断の一助になります。問診では、発汗がきっかけになっているかどうかを医師が確認しますので、「運動後に赤いボツボツが出た」など、どんなときに症状が出たかを記録しておくとよいでしょう。アセチルコリン皮内テストで膨疹が出るのかを確認する場合もあります。

治療は、膨疹やかゆみを抑えるために、内服の抗ヒスタミン薬が使われますが、効果がなければ他の内服薬も組み合わせて用いられます。

なお、減汗性コリン性蕁麻疹の場合は、蕁麻疹が出ない程度に積極的に汗をかいてからだを汗に慣らすことで、症状を改善させる方法もあります。


●発汗をコントロールして症状の悪化を防ぐ

汗をかくのは本来悪いことではないのですが、コリン性蕁麻疹は汗をかくことで症状が悪化する可能性があるので、注意が必要です。熱い食べ物や辛い食べ物は控える、入浴は38〜40℃ぐらいのぬるめのお湯に入る、暑いときは通気性のよい服を着用するなど、発汗を抑えるよう心がけます。緊張やストレスも発汗を誘発するので、自分なりのリラックス法を見つけておくことも大事です。


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監修

関東中央病院 皮膚科部長

鑑 慎司