急増する「梅毒」と「先天梅毒」とは ?

最終編集日:2024/8/19

梅毒」とは、性行為によって生じる性感染症のひとつで、原因菌は梅毒トレポネーマという細菌です。梅毒の感染者数はここ数年増加傾向にあり、2022年以降、厚生労働省の全数調査結果では感染報告者数が1万人を超えるほどになっています。


●梅毒の感染経路と症状

梅毒は、病原体の梅毒トレポネーマを含む精液や腟内分泌、血液などが、性的な接触で粘膜や皮膚などに触れることで感染します。感染しても潜伏期間は無症状だったり、症状が現れてもすぐに消えたり現れたりをくり返すので、気づかない場合もあります。


潜伏期間を経た後、梅毒は経過ごとに次のような症状が現れます。

・第1期(感染から約3週間後)

性器、口唇、口腔内、肛門など感染した部位に、痛みやかゆみを伴わないしこりやくぼみ、潰瘍などができます。また鼠経部(股の付け根部分)が腫れたりすることもあります。これらの症状は治療をしなくても数週間ほどで自然に消えますが、治ったわけではありません。

・第2期(感染から約3カ月後)

感染に気づかないまま感染から3カ月ほど経つと、血液によって病原体が全身に運ばれるため、主に皮膚にさまざまな症状が現れます。梅毒性ばら疹(全身にできる赤いじんましんのような発疹)、丘疹性梅毒疹、梅毒性乾癬(手や足の皮膚がカサカサな状態になる)、扁平コンジローマ(平らなイボができる)、脱毛などが典型的な皮膚症状です。これらの症状は自然と消えたり、再び現れたりすることがあるものもあります。

・第3期(感染から数年後)

治療をせずに感染から数年経過すると、皮膚、筋肉、骨、臓器にゴム腫(やわらかい腫瘍)ができたりします。また、心臓、血管、神経などに異常が生じたります。特に神経障害になると完治しにくく、後遺症が残ることもあります。


感染力が強く、最も人にうつしてしまうのは、第1期、第2期の早期梅毒の時期です。


●梅毒の検査方法

梅毒は、血液検査でわかります。ただし、感染したと思われる日から4週間以上経過してから受けるようにしましょう。その前だと判断できません。気になる症状が現れたり、感染の心当たりがあったりする場合は、医療機関(泌尿器科、産婦人科、感染症科、皮膚科、性病科など)を受診して、早期に検査をすることが大切です。リスクある行動をしてしまった場合、交際パートナーが変わった時などには、積極的に検査を受けるようにしましょう。


●妊娠中の梅毒感染は子どもに悪影響

女性の若年層の梅毒感染者の増加に伴い、「先天梅毒」の子どもの数も増えています。先天梅毒とは、梅毒に感染している妊婦からの母子感染によって子どもに起こるものです。流産や死産につながることもあります。生後まもなくして、皮膚の異常(発疹など)が現れたり、数年後には目の異常や難聴、歯や骨の異常が現れたりすることがあります。

母子感染による先天梅毒を防ぐために、妊婦健診では妊娠初期に血液検査を行い、梅毒感染の有無を調べます。もしも陽性と診断されても、適切な治療で子どもが先天梅毒になるリスクを減らすことができます。なお、妊婦健診時に梅毒に感染していなくても、その後の性行為でパートナーから感染する恐れもあります。妊娠中の性行為はコンドームを正しく使用することが大切です。


監修

愛知医科大学医学部 臨床感染症学講座 教授

三鴨廣繁

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