スーパー耐性蚊も！ 蚊・ダニが媒介する感染症

夏はキャンプや登山、ピクニックなど、屋外でのレジャーを楽しむ機会が増えますが、気をつけたいのは蚊やダニです。ウイルスなどの病原体を保有する蚊やダニに刺されると、感染症を発症する可能性があるからです。

●海外で流行中の病原体を持つ蚊が国内に持ち込まれる可能性も

蚊が感染症にかかっている人の血を吸うと、蚊の体内でウイルスなどの病原体が増殖します。その蚊が別の人の血を吸うときに病原体をうつし、感染を広げていきます。これが蚊による感染症の媒介のしかたです。

蚊が媒介する感染症には、ウイルス疾患である「日本脳炎」、「デング熱」、「ジカウイルス感染症」、「チクングニア熱」、「ウエストナイル熱」、「黄熱」、原虫疾患である「マラリア」などがあります。このうち近年、日本国内で感染と発生が確認されているのは日本脳炎とデング熱で、ほかの多くは海外で感染した後に帰国して発症する輸入感染症とみられています。日本脳炎はワクチンが普及していることもあり、近年の報告患者数は年間10人以下、デング熱の国内発生患者は2014年と2019年に報告されているのみです。

しかし、デング熱は現在、世界的に流行しており、病原体を持つ蚊が日本に持ち込まれる可能性があります。さらに、海外では従来の殺虫剤が効かない「スーパー耐性蚊」が問題になっており、決して油断できない状況です。

●皮膚にくい込んでいるマダニを見つけたら皮膚科へ

森林や草地に生息しているダニの中で特に注意したいのは「マダニ」で、蚊と同様に感染症を媒介します。マダニは肉眼で確認できる大型のダニで、3〜8㎜の体長があり、人や動物にとりついて、皮膚に口器を突き刺して血を吸います。離れにくく、長時間（数日から長いと10日）にわたって血を吸い続け、血で体がパンパンに膨らむと体長が10〜15㎜にもなります。

マダニが媒介する病気のうち、日本国内での感染と発症が確認されているのは「重症熱性血小板減少症候群（SFTS）」、「日本紅斑熱」、「ダニ媒介脳炎（TBE）」、「ツツガムシ病」などですが、海外では「クリミア・コンゴ出血熱」、「回帰熱」なども発生しています。

近年、日本で問題になっているのはSFTSです。2013年に国内で初めての患者が確認されて以降、毎年60〜100名程度の患者が報告されています。SFTSウイルスを持っているマダニに刺されると、6〜14日の潜伏期間を経て、発熱や消化器症状（吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、下血）などが現れ、重症化すると死に至ることもあります。

皮膚にくい込んでいるマダニに気づいた場合は、そのまま皮膚科を受診し処置してもらいましょう。自分で引き抜こうとすると口器の一部が皮膚内に残り、化膿や病原体の拡散の恐れがあります。また、刺されたあと数週間程度は体調の変化に気をつけ、発熱などの症状があれば速やかに医療機関を受診しましょう。

●蚊・マダニ対策は「肌を露出させないこと」と「虫よけ剤を使うこと」

屋外活動で蚊、ダニに刺されないためにぜひ実行したいのは、「肌を露出させないこと」と「虫よけ剤を使うこと」です。肌の露出を少なくするには、長袖、長ズボンを着用し、サンダルは避けてスニーカーなどの足を完全に覆う靴を履きましょう。さらに帽子や手袋を着用し、首にタオルを巻くことで、肌の露出を極力減らせます。虫を発見しやすいように、淡くて明るい色の服を着ることも心がけるとよいでしょう。

マダニ対策として、上記に加え、シャツの裾はズボンの中に入れ、ズボンの裾も靴下の中に入れるようにします。マダニはシャツやズボンの裾からも侵入することがあるからです。また、マダニは草むらや地表に潜んでいるので、地面に直接寝転んだり、座ったりせず、シートや椅子を使用しましょう。野外活動後には、室内に入る前に上着などを脱ぎ、マダニがついていないかよく点検し、その後できるだけすぐに入浴するのがおすすめです。

虫よけ剤（虫よけスプレー）は、「ディート」や「イカリジン」という成分が含まれているものが効果的です。虫は人間や動物が発するにおいや炭酸ガス、温度、湿度などを感知して吸血目標を定めるのですが、これらの成分は虫の感知能力を混乱させることで虫よけ効果を発揮します。