リンパ浮腫

りんぱふしゅ

最終編集日:2023/11/7

概要

浮腫を生じさせる疾患にはさまざまなものがありますが、リンパ浮腫は、リンパ管内のリンパ液の流れが悪くなって、リンパ液がたまり、むくみを現す状態を指します。先天性のもの、あるいは原因がわからない「一次性リンパ浮腫」と、何らかの病気が原因となって起こる「二次性(続発性)リンパ浮腫」に分けられ、二次性のものが80~90%を占めるといわれています。二次性の多くは、がんの手術でのリンパ節郭清や放射線治療の合併症です。リンパ浮腫は病期によって浮腫に特徴があり、病期が進むほど組織の線維化が進み、皮膚の硬化を伴うと治療に難渋するようになるため、できるだけ早い段階の診断と治療介入が必要です。


●リンパ系とは

リンパの役割には、①リンパ球産生や免疫などのからだを守る働き、②毛細血管から漏れ出したたんぱくや水分を吸収して運ぶ働きがあります。血液は毛細血管を介して全身の末端組織に酸素と栄養を送り届けた後、再び血管に吸収されます。その際、たんぱく質を多く含むものや一部の老廃物は毛細血管ではなく、毛細リンパ管に吸収されてリンパ液となります。

リンパ管は全身に張り巡らされていて、最終的に鎖骨の辺りにある左右の「静脈角」というところで静脈に流入し、心臓に戻ります。静脈角に至る前の、いわば大きな中継点として、右鎖骨の辺りにある「右リンパ本幹」、胸にある「胸管」、みぞおちの辺りにある「乳び槽」、左右の足の付け根にある「鼠径(そけい)リンパ節」、わきの下の「腋窩(えきか)リンパ節」、首の「頸部(けいぶ)リンパ節」などがあります。

リンパ系には、血管系における心臓のようなポンプの働きをする部位がありません。リンパ管の壁も収縮することが、最近明らかになりましたが、それ以外に、リンパ液の流れは、筋肉の収縮・弛緩による圧力の変化や、呼吸による胸腔内の圧力の変化、外からの力による圧力(マッサージなど)などに左右されます。そのため、血液よりも滞るリスクが高いと考えられています。

原因

一次性リンパ浮腫は、先天的なリンパ管・リンパ節の発育不全(低形成性)で起こりますが、その原因は明らかになっていません。

二次性リンパ浮腫の原因としてもっとも多いのは、乳がん子宮がん卵巣がんなどの婦人科系のがん手術によるリンパ節郭清です。二次性リンパ浮腫の約90%は女性に発症するといわれるほど、頻度が高くなっています。そのほか、大腸がんや前立腺がんでもリンパ浮腫を起こしやすいといわれています。

症状

片側のうでや足がむくみます。重苦しさ、だるさを感じ、皮膚が突っ張る・硬くなる、乾燥しやすい、押すとへこむなどがみられます。むくみが重度になると、動かしにくい、関節が曲げにくいなども現れます。

リンパ管炎(蜂窩織炎〈ほうかしきえん〉)を起こすと、皮膚の赤み・腫れ、熱感、痛み、発熱、悪寒、倦怠感などが現れます。

検査・診断

浮腫の診療を行う際は、鑑別診断も重要で、通常の診療と同じように問診、身体診察、血液・生化学検査、画像検査の順で進めていきます。問診では、手術に関する既往歴、外傷や炎症の既往、そしてまれですが、フィラリアの感染症も考え、渡航歴なども確認します。また、浮腫が全身か局所か、左右差があるか、発赤があるか確認します。

超音波(エコー)検査では、浮腫の範囲などを確認します。リンパ浮腫が強く疑われる場合には、リンパ管の走行や機能を精査するリンパシンチグラフィが確定診断に有効とされています。そのほか、造影CT検査などで他疾患(深部静脈血栓症、がんの再発など)との鑑別診断を行います。

治療

複合的治療と呼ばれる保存療法と、外科的治療の手術があります。


●保存療法(複合的治療)

リンパ浮腫に対する保存療法は「弾性着衣を用いた圧迫療法」「圧迫下の運動療法」「用手的リンパドレナージ」「スキンケア」の4つからなり、それらを組みあわせるので、複合的理学療法とも呼びます。リンパ液の流れを促し、組織にたまっているリンパ液をリンパ管に吸収させる目的で行います。弾性着衣として、ストッキング、バンデージ(包帯)を用います。


●手術(外科的治療)

複合的治療で改善がみられない場合に考慮され、現在行われている代表的な術式はリンパ管静脈吻合(LVA)とリンパ節移植の2つです。保存療法が対症療法であるのに対し、いずれもリンパ浮腫の根本原因であるリンパ機能障害の改善を目的としています。いずれの手術も1㎜未満の脈管を吻合する(つなぐ)微細手術の技術を要します。

〈顕微鏡下リンパ管静脈吻合術(LVA)〉……むくみが起きている部位よりも上流で、リンパ管と静脈をつなげるバイパス手術です。LVA後に圧迫療法を併用するとさらに効果が上がります。

〈リンパ節移植術〉……健常なリンパ節を患者さんの鎖骨周辺や胸部、鼠径部から採取して、患部に移植する手術です。リンパ管の変性が進行している場合に適応されます。

セルフケア

予防

リンパ浮腫は早期に見つけることが大切です。靴がきつくなった、うでが上げづらい、手足が重い・だるい、皮膚が硬くなった・乾燥しやすくなったなど、むくみの徴候に気づいたら、主治医に相談しましょう。

生活のなかでは以下のようなことに留意して症状を改善し、また皮膚のバリア機能を取り戻して感染症を予防します。


●皮膚を清潔にして保湿に努めるなど、スキンケアを欠かさない。

●皮膚を傷つけない、カミソリは使わない、爪の手入れにも注意する。

●日焼けを避ける。

●締め付けない下着・衣服・靴を選ぶ。

●足にむくみがあるときは、睡眠時に足を高くする。

●長時間の立ちっぱなし、座りっぱなしは避ける。

●医師の指導のもと、自分でできるリンパドレナージを体得して毎日行う。

監修

医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長

富田益臣

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