てんかん

てんかん

最終編集日:2023/7/25

概要

脳の神経細胞(ニューロン)が過剰に発火し(電気信号を発し)、けいれんや筋肉の緊張などの「てんかん発作」を起こす病気です。1回の発作は5分以内の一過性のものですが、くり返し同じ症状が出現します。てんかん発作が5分以上つづいたり、意識の回復がないまま短い発作がくり返し起こる状態を「てんかん重積状態」と呼び(米国学会のガイドライン〈2012年〉。国際抗てんかん連盟での定義〈1981年〉では30分以上つづくものとされる)、早急な治療が必要と判断します。

てんかんは1000人に5~8人の発症率で、すべての年代で起こり、小児と高齢者に好発します。

原因

脳の神経細胞の発火が過剰になるために「てんかん発作」が起こります。その原因として、先天性の脳の異常、遺伝子の異常、代謝の異常などのほか、後天的な分娩時の事故、頭部外傷、脳卒中などの脳血管障害、認知症、自己免疫疾患、脳炎や髄膜炎などの中枢神経の感染症などが挙げられます。原因となる疾患があるものを「症候性てんかん」と呼びます。

一方、脳に異常がみつからないのに発作が起こるものは「特発性てんかん」と呼ばれます。

症状

大きく「全般起始発作」と「焦点起始(部分)発作」に分けられ、それぞれに次のような発作型が分類され、症状が現れます。


●全般起始発作

脳全体、あるいは広い範囲で過剰な発火が起こります。多くは、発作時の意識がありません。からだを突っ張らせる「強直発作」、がくがくとけいれんする「間代発作」、間代から強直に移行する「強直間代発作」、突然からだの力が抜けて倒れる「脱力発作」、30秒程度意識を失う「欠神発作」、四肢をピクッとさせる「ミオクロニー発作」などがあります。そのほか、筋肉の緊張・弛緩やけいれんに伴って、発作中に、白目をむく(眼球上転)、口から泡を吹く、舌をかむ(咬舌)、尿失禁などがみられることがあります。


●焦点起始(部分)発作

意識がある「焦点意識保持発作」と、1~3分にわたって行動が止まり、無表情になって刺激に反応しなくなる「焦点意識減損発作」があります。

焦点意識減損発作では、口をもぐもぐと動かす・手を意味なく動かす・衣服をいじるなどの「自動症」がみられることがあります。

焦点意識保持発作では、からだの一部分がけいれんする「運動発作」、しびれ感・視野に閃光(きらきらした光)が現れる・耳鳴り・変な味がする・変なにおいがするなどの症状が現れる「感覚発作」、吐き気・嘔吐・腹痛・動悸・寒気などが現れる「自律神経発作」、既視感をもつ(体験したり見たりしたことがないのに、すでに体験した、見たことだと感じる)・恐怖を感じるなどの「感情発作」などが起こります。


焦点起始発作から全般起始発作、とくに強直間代発作に移行することもあり、感覚発作や感情発作は、てんかん発作の「前兆」と呼ばれることもあります。さまざまな症状を表すのは、過剰な電気信号が現れる部位(焦点)が異なるためです。しかし、患者さんによって焦点は決まっており、同じ症状がくり返し現れます。

検査・診断

発作からてんかんが疑われたら、脳波検査、頭部MRI検査、血液検査、長時間ビデオ脳波同時記録検査(数日間、同時記録する)などが行われます。

脳波にはてんかん特有の波が現れるため、焦点の特定、発作の種類などに有効です。てんかんの脳波が1回で把握できないこともあるため、複数回行うこともあります。長時間ビデオ脳波同時記録検査は、脳波の記録とビデオ撮影を行うもので、発作時の症状や脳波の状態を記録し、焦点の特定を行います。

難治性のてんかんで外科手術を考慮する場合には、脳循環代謝画像検査(PET、SPECT)、脳磁図検査(MEG)などを行い、手術適応の可否、手術法などを決定します。

治療

●薬物療法

てんかんの多くは、抗てんかん薬の服用をつづけることで発作を抑制することができ、通常の社会生活を送ることができるようになります。薬を指示どおり服用することに加えて、発作の引き金となる事柄がある程度明らかになっているため(以下の「セルフケア」参照)、それらを避ける生活を送ります。

一方で、複数の抗てんかん薬の服用をつづけても発作が難治に経過する場合があります。てんかん重積状態の場合は、速やかにけいれんを止める治療を行います。これは、けいれん発作が30分以上つづくと、発作が治まったあとに後遺症が残るリスクが高くなるためです。また、けいれんが治まっても意識障害がつづく「非けいれん性てんかん重積状態」もあることから、慎重に治療を継続します。てんかん重積状態では、抗てんかん薬や麻酔薬などの点滴・静脈注射の投与が行われます。全身状態によっては、気管挿入による気道確保、脳波の持続モニタリングなどの集中治療が必要になることもあります。

2種類以上の適切な抗てんかん薬での治療を行っても、日常生活が困難となる発作が1年以上コントロールできない場合には、薬剤抵抗性てんかんとして、手術の可能性を考慮します。

小児の場合は、1年経っていなくても成育への影響を考え、早期に手術を選択することもあります。


●手術

専門施設で難治性の再評価、専門的な術前検査が行われ、最適な手術治療で後遺症がなく、発作の消失や減少が得られる可能性があれば、手術が可能と判断されます。外科的治療には複数の方法があり、効果と合併症を考慮して選択されます。


①発作のもとになっている部分を切除する「病巣切除」や病巣を含めた「側頭葉切除」をすることで発作を起こさないようにする手術は、焦点が特定できていて切除後のメリットとデメリット(手術の合併症や後遺症など)を総合的に判断してメリットが勝る場合に選択される

②発作のもとになっている部分が切除できない重要な部位だったり、焦点の範囲が広い場合や刺激が広範に伝わる場合は、刺激の広がりを防ぐように脳に切開線を入れたり、脳梁(のうりょう)を離断する「脳梁離断術」などが行われる開頭手術ではなく、緩和手術として、前胸部に電極を植え込み、頸(首)部にある迷走神経を刺激することで、てんかん発作の回数を減らす「迷走神経刺激療法」などが選択される

③開頭手術ではなく、緩和手術として、前胸部に電極を植え込み、頸(首)部にある迷走神経を刺激することで、てんかん発作の回数を減らす「迷走神経刺激療法」などが選択される


●食事療法

炭水化物・たんぱく質の摂取と、総カロリーを制限する「ケトン食療法」が、一部のてんかんに有効とされています。

セルフケア

病後

てんかん発作が1年以上起こらなければ寛解と判断され、服薬なしで5年以上経過すれば、消失と判断されます。けいれんなどの大きな発作がなくても、脳波にはてんかんを示す波が現れることも少なくありません。その場合は抗てんかん薬を継続する必要があります。

発作の合併症・後遺症として、成育の遅れ(小児の場合)や身体的障害が起こることがあり、障害にあわせたリハビリテーションが行われます。

てんかんの発作は、体調を崩したときや体力が低下したときに起こりやすいとされています。睡眠不足、過労、ストレス、月経、気圧・天候・気温の変化などが発作のきっかけになります。また、読書やゲーム、細かい作業に集中した後、木漏れ日がちらちらするなどの光の点滅を見た後なども要注意です。発作の記録をつけると、どのようなことがきっかけになるのかをおおよそ把握することができます。

てんかんの持病のある人でも、多くは妊娠・出産は可能です。妊娠・出産の可否、妊娠の時期や抗てんかん薬の調整などについて主治医とよく相談し、十分準備をして臨みましょう。

監修

昭和大学 医学部脳神経外科 名誉教授

藤本司

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