尿道炎にょうどうえん
最終編集日:2022/4/7
概要
尿は腎臓でつくられ、尿管を通って膀胱に流れ込んだ後、尿道を通って体外に排出されます。本来、尿に細菌は存在しませんが、尿を運ぶルート(尿路)において細菌に感染することもあり、これを尿路感染症といいます。
感染部位によって、上部尿路感染症(腎盂腎炎)、下部尿路感染症(膀胱炎、尿道炎、前立腺炎)に分けられます。排尿時の痛み、頻尿、尿意切迫などの症状が現れます。
原因
尿道炎は基本的には男性の疾患です。女性の場合は尿道炎だけではなく膀胱まで炎症が波及して、膀胱炎の症状を呈することがほとんどです。性的接触によって細菌や寄生虫に感染し発症する性感染症と、大腸や肛門周囲に常在している細菌などが尿道口から侵入して炎症が起こるものに分けられます。
性感染症には、淋菌が尿道に感染して発症する淋菌性尿道炎、淋菌以外の菌によって発症する非淋菌性尿道炎があります。
淋菌以外の菌には、クラミジア、マイコプラズマ、トリコモナス(寄生虫)、などがあります。そのうちクラミジアによるものが約半数を占めていて、これをクラミジア尿道炎と呼びます。
性感染症以外の尿道炎は、尿の出が悪い排尿障害や尿道狭窄などの合併などが影響すると考えられます。
症状
排尿時の痛み、頻尿、などがみられますが、症状がまったく出ない場合もあります。
炎症を起こした箇所が化膿して生じる黄白色、あるいは黄緑色の不透明な粘液、うみが出ることもあります。これはおもに白血球と血清、そのほかの壊れた組織や死んだ細菌です。うみの状態は2つに大別され、ひとつは色が濃く、どろっとして大量に出ているもの、もうひとつは白っぽく、さらさらして量も少ない状態です。
また、尿道口から分泌物が出ることもあります。黄白色のうみのような分泌物が大量に出る場合から、起床時に粘液状の少量に気づく程度のことまでさまざまです。淋菌性尿道炎では膿性の分泌物を認めることが多いのにくらべ、非淋菌性尿道炎では症状が軽く、分泌物の増加を自覚しないことも多いです。
尿道の感染症に気づかず放置したり治療が不十分だったりすると、尿道が狭くなり(狭窄)、膀胱や腎臓に感染が広がるリスクが高まります。
女性の場合で尿道膀胱炎の症状が長引く場合、女性器(腟、子宮頸部、子宮体部、卵巣および卵管)の感染を合併しているケースが多くみられます。クラミジアによる子宮頸管炎を併発していても症状が軽いことが多く、発見が遅れがちになります。放置すると突然激しい腹痛を生じる骨盤腹膜炎を起こしたり、不妊症や流・早産などの原因となったりすることもあり、注意が必要です。
検査・診断
尿道口から出ているうみをグラム染色、または単染色し、顕微鏡で観察すると、淋菌の場合、白血球内にある対をなす球形の菌がみられます。クラミジアは普通の顕微鏡では観察することができず、白血球のみがみられます。診断の確定には遺伝子増幅法(PCR法)による検査が行われることもあります。これはDNAを増幅して細菌を検出しやすくするもので、95%の確率で診断することができます。
治療
検査によって検出された原因菌に対して、一般には抗生物質(抗菌薬)が使われます。
淋菌感染症ではセフトリアキソン、スぺクチノマイシンなどの注射が行われます。
クラミジアやマイコプラズマでは、テトラサイクリン系、マクロライド系、ニューキノロン系の抗生物質の飲み薬が処方されます。
原因として性感染症が疑われる場合は、パートナーも検査を受け、治療する必要があります。
セルフケア
予防
尿道炎は、種類によってさまざまな症状が現れますが、予防法は共通しています。
まずからだの免疫力を高めることがいちばんの予防法です。免疫力が高ければ体内に細菌が侵入してきても症状は抑えられますが、免疫力が低下していると細菌が繁殖しやすくなります。
バランスのよい食事をとって十分な睡眠をとり、ストレスをため込まないようにしましょう。
性感染については、性行為においてコンドームを使用することで感染リスクを下げることができます。
監修
なかむらそうクリニック 院長
中村聡
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