淋菌性尿道炎
りんきんせいにょうどうえん

最終編集日:2023/5/16

概要

尿道炎とは、尿の通り道である尿道が炎症を起こす病気です。尿道炎は基本的には男性の疾患で、女性の場合は尿道炎単独よりも膀胱まで炎症が波及して、膀胱炎の症状を呈することがほとんどです。性的接触によって細菌や寄生虫に感染し発症する性感染症と、大腸や肛門周囲に常在している細菌などが尿道口から侵入して炎症が起こるものに分けられます。

淋菌性尿道炎は性感染症のひとつです。排尿痛を伴い、尿道からうみが出てきます。一度治っても免疫を獲得せずに再感染するため、性的接触時に注意することと、定期的な検査が大切です。


原因

淋菌は、粘膜の接触により人から人に感染します。粘膜から離れるとわずか数時間で感染力を失い、日光、乾燥、温度の変化、消毒剤で簡単に死滅します。とくに尿道、子宮頸部、直腸、のどなどの粘膜や、目の前部を覆う膜(結膜と角膜)に感染することから、粘膜が直接接触する性的接触(腟性交、オーラルセックス、アナルセックス)以外での感染はあまりありません。

淋菌性尿道炎は、淋菌が尿道口から侵入し尿道で炎症を起こすため、排尿痛を伴い、尿道からうみが出るなどの症状が現れますが、のどや直腸に感染しても症状は現れません。そのため、無症状のまま性的接触によってほかの人を感染させてしまうことがあります。1回の性行為で30~50%の確率で淋菌に感染するといわれています。


症状

潜伏期は2~9日です。男性と女性とでは、尿道炎の症状の出方がやや異なる点があります。

●男性の場合

性行為などの感染機会後、2~7日の潜伏期間を経て発症し、強い尿道痛、排尿痛が生じ、外尿道口周囲が赤みを帯びたりします。また、尿道口から多量の濃いうみ(黄白色でどろっとしている)が出てきます。

後遺症として尿道狭窄により排尿困難になることがあります。進行すると、前立腺炎や精巣上体炎をひき起こし、痛みや、前立腺・陰嚢の腫れ、発熱などがみられます。治療後に無精子症を生じる場合があります。

●女性の場合

膿性のおりものを認めることがあります。女性は膀胱まで感染が上昇し、子宮頸管炎を起こすことがあります。

女性の場合には淋菌に感染すると、尿道や膀胱よりも腟炎や子宮頸管炎を起こすことが多く、排尿に関係した症状よりもむしろ、膿性のおりものを自覚することが多いです。排尿症状は、男性にくらべて自覚症状が軽いケースが多いとされますが、自覚症状がみられなかったとしても感染源になります。進行すると、子宮内膜炎や卵管炎などの骨盤内炎症性疾患を起こすことがあり、その場合は発熱や下腹痛が現れます。後遺症として不妊症なることがあります。


検査・診断

以下の検査方法があります。

・検鏡法

尿道口から出ているうみや分泌物を採取し、染色して顕微鏡で観察すると、淋菌が白血球内に確認される。

・培養検査

うみや分泌物を培養して、淋菌を増殖させることでより詳細に確認できる。

・遺伝子検査

初尿(排尿開始直後の尿)を遺伝子増幅法(PCR検査)にかけて、淋菌に特異的な遺伝子を増幅させて検出する。DNAを熱により分解し、分解された部分に酵素が付着していき、DNAを伸ばして増幅させる方法。


治療

現在、国内で見られる淋菌は、経口の抗生物質(抗菌薬)が効きにくくなった菌が増えているため、淋菌に強い殺菌力を持つ注射薬(抗菌剤)を静脈注射または筋肉注射する治療法が推奨されています。

セルフケア

病後

ワクチンはなく、感染して治っても免疫を獲得しないため、再度感染します。無症状でも感染している場合があるのでピンポン感染(ピンポン玉ように、うつしあい感染と治癒をくり返すこと)も多くみられます。

淋菌性尿道炎の感染がわかった場合は、パートナーも同じタイミングで治療を受け、完全に治るまで必ず医師の指示に従って治療をつづけましょう。

・コンドームを正しく着用する

・治療期間はあらゆる性的接触を避ける


監修

なかむらそうクリニック 院長

中村聡

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