女性化乳房症
じょせいかにゅうぼうしょう

最終編集日:2022/4/6

概要

女性化乳房症とは、男性に乳房の発育を認める疾患です。加齢や肝疾患、甲状腺中毒症、薬剤性などにより、あらゆる年代で生じます。思春期のホルモンバランスの乱れによるものは一時的なもので1~2年で自然消退します。

原因

女性化乳房症になる原因のひとつに、ホルモンバランスの乱れによる生理的な変化が挙げられます。例えば、母親の胎内環境が影響する新生児期、男性ホルモン(テストステロン)が増える思春期、反対に男性ホルモンが減少する高齢期に起こりやすいことがわかっています。また、ホルモンの分泌異常を起こすような、精巣腫瘤、甲状腺中毒症(甲状腺機能亢進症)、肝機能障害、慢性腎臓病などの病気も原因となります。

このほか、薬剤の副作用も女性化乳房症になる原因のひとつです。女性ホルモン剤、抗生剤、抗胃潰瘍薬、向精神薬などの副作用が知られています。


症状

おもな症状には、乳房がふくらんで乳頭の下にボタン大のしこりができたり、乳頭が痛んだりします。しこりが大きくふくらむケースでは、見た目が気になり心理的なストレスを抱える人も少なくありません。

また、乳房が押されたり乳頭が服にこすれたりして、痛みを感じて気づくこともあります。しこり自体は良性で心配はいりませんが、男性乳がんなどの病気が隠れていることもあるため、検査をして診断します。


検査・診断

まず、問診と触診をすることで女性化乳房症か、乳腺ではなく皮下脂肪が増えたことによる偽性女性化乳房かを診断します。

さらに、男性乳がんを発症しているかを鑑別します。この検査には、超音波検査、マンモグラフィーといった画像検査を用います。乳房のしこり部分に針を刺して細胞を採取して観察する、穿刺吸引細胞診という検査も行われます。

そのほか、肝硬変や慢性腎臓病などの基礎疾患をみつけるため、血液検査や画像検査を行います。


治療

思春期や高齢期の生理的なホルモンバランスの変化で起こる女性化乳房症は、通常1~2年程度で自然に治ります。また、薬の副作用によるものは、原因となる薬の服用を中断することで改善します。

しこりの痛みには薬物療法や男性ホルモン剤の注射を1~2カ月つづけていくと、しこりが小さくなって症状が和らぎます。

肝硬変などの基礎疾患、あるいはほかの疾患によって発症している可能性があれば、予想される疾患の精査を行い、原因となる疾患の治療が行われます

改善がみられない場合には、乳腺切除の外科的手術を検討することもあります。


セルフケア

病後

ホルモンバランスの乱れによる女性化乳房症が自然治癒した人でも、肥満になると、脂肪が増えるため、当然、胸にも脂肪が蓄積されます。これを偽性女性化乳房と呼びます。ただし、脂肪細胞からも女性ホルモン(エストロゲン)は分泌されているため、皮下脂肪がたっぷりついた肥満体型は乳腺が発達しやすくなります。そのため、偽性女性化乳房であっても乳腺が発達する真性女性化乳房になる可能性がありますので注意が必要です。

監修

医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長

富田益臣

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