特発性肺線維症

とくはつせいはいせんいしょう

最終編集日:2022/1/11

概要

特発性肺線維症(IPF)とは国が定める特定疾患に指定されている間質性肺疾患の一種で、進行性の肺線維症をひきおこす疾患です。

間質性肺疾患とは肺の間質と呼ばれる部分に炎症が起こる病気の総称で、原因が特定できるものと特定できないものに分けられます。原因不明のものを特発性間質性肺炎(IIPs)といい、病態に応じてさらに分類されますが、患者さんのほとんどを特発性肺線維症が占めています。

進行性の病気ですが、大部分の患者さんでは病状の進行はおだやかです。気胸や肺がん、感染症を合併する頻度が高く、かぜなどをきっかけに呼吸機能が急激に悪化する急性増悪が起きることもあります。

原因

特発性肺線維症の原因は明らかになっていません。肺の気道の奥にある肺胞は、生命維持に必要な酸素を血液に取り込み二酸化炭素を放出する役割をもっています。肺胞の壁の部分を間質、そのなかの空気の部分を実質といいます。

特発性肺線維症は、間質が何らかの影響によってくり返しダメージを受け、細胞を修復する過程が正常に行われないこと(正常の組織に戻らないこと)によって発症すると考えられています。

その要因として、老化(人が年をとり正常な機能を保てなくなること)、遺伝子の異常が生じていること、発症者のほとんどが喫煙者であることからたばこの関与も考えられており、そのほか逆流性食道炎やウイルスなどへの感染との関係性も指摘されています。

症状

初期には無症状の場合が多く、やがてたんを伴わない乾いたせきや息切れが出現します。息切れは、初めは階段の上り下りや軽い運動をしたときにみられますが、進行すると少し動いただけでも息苦しくなります。

進行すると、指先が太鼓のバチのように太くなるばち指や、皮膚や爪の色が青紫色になるチアノーゼの症状がみられることもあります。

一般に症状の進行はゆっくりですが、感染症などがきっかけとなって急激に悪化する場合もあります。これを急性増悪といい、年間5~10%の患者さんにみられ、急性増悪後の平均余命は2カ月以内と予後不良になります。特発性肺線維症の平均余命は3~5年といわれていますが、なかには10年以上存命するケースもあります。

検査・診断

問診、聴診などの身体診察の後に、胸部X線検査や胸部CT検査、呼吸機能検査を行います。さらに運動時における血液中の酸素飽和度の低下を確認し、病状を評価して病型を分類します。

特発性肺線維症では多くの場合、聴診時にベルクロラ音と呼ばれるマジックテープをはがすときのような音が聴取されます。また、胸部X線検査では網状影などがみられ、進行すると胸部CT検査で蜂の巣状の蜂巣肺を確認できます。

このような所見があり、原因が明らかでなく、年齢が50歳以上かつ発症がおだやかで、発症してから3カ月以上経過している場合、特発性肺線維症と診断します。正確な診断が必要な場合は、気管支鏡下の肺生検、全身麻酔の手術による肺の組織検査を行います。

治療

特発性肺線維症の治療は、現在のところ有効な治療法が乏しいため、進行を抑えることが中心です。

薬による治療では、一般に抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)を使います。抗線維化薬には肺の線維化の進行や肺活量の減少を抑える効果があり、さらに、急性増悪を抑制する効果もあることが報告されています。

呼吸機能が大きく低下したり低酸素状態になったりする場合は、在宅酸素療法を行います。在宅時は酸素濃縮器や液体酸素タンクで酸素を補い、外出の際は小型の酸素ボンベを携帯します。呼吸リハビリテーションを行うこともあります。

喫煙は症状を悪化させたり発がん率を上昇させたりする可能性があるため、状態にかかわらず禁煙が必須となります。

セルフケア

療養中

特発性肺線維症と診断された場合は、何よりも急性増悪の予防が重要です。ウイルスなどへの感染がきっかけになることもあるので、外出時のマスク着用、手洗い、うがいを徹底し、肺炎やインフルエンザや新型コロナのワクチン接種などを受けておきましょう。さらに、規則正しい生活を心がけ、過労や睡眠不足による免疫力の低下を避けることが大切です。

予防

喫煙しないようにする、吸っている人はすぐに禁煙するようにします。喫煙習慣はニコチンに対する一種の薬物依存ですので、自発的に禁煙できない場合には、禁煙外来などの医療機関で指導、治療を受けることをおすすめします。

監修

千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授

巽浩一郎

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