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特発性肺線維症
とくはつせいはいせんいしょう

最終編集日:2026/4/20

概要

肺は、空気の通り道である気道が中心から枝分かれを繰り返しながら末梢へと延びており、その先端には肺胞と呼ばれる、ぶどうの房のような小さな袋がたくさん集まった構造となっています。肺の「間質」とは、この肺胞と肺胞の間の領域や、肺胞と血管の間の領域のことを指します。

間質性肺炎とは、この間質の領域に炎症や障害が起きたために壁が固く厚くなり、酸素を取り込みにくくなって呼吸困難やせきなどの症状をきたす疾患です。間質性肺炎のうち、原因を特定できないものを「特発性間質性肺炎(IIPs)」といいます。

特発性肺線維症(IPF)は、特発性間質性肺炎のなかでももっとも予後不良なタイプで、進行性の肺の線維化を引き起こす疾患です。60歳以上の男性に多いといわれており、国が定める指定難病となっています。

IPFは気胸や肺がん、感染症を合併する頻度が高く、かぜなどをきっかけに呼吸機能が急激に悪化する急性増悪が起きることもあります。

原因

特発性肺線維症は、肺の間質が何らかの影響によってダメージを受け、細胞を修復する過程が慢性的に繰り返されることで線維化を引き起こし、発症すると考えられています。その要因として、加齢(人が年をとり正常な機能を保てなくなること)、遺伝子の異常が生じていること、喫煙歴のある患者さんが多いことから、たばこの関与が指摘されています。

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症状

特発性肺線維症では、初期には自覚症状がみられないことが多いものの、病気が進むにつれて、乾性咳嗽(かんせいがいそう)と呼ばれるたんを伴わない乾いたせきが続いたり、動作時に息切れを感じやすくなったりします。また、指先がふくらんで太くなる「ばち指」がみられることもあります。

かぜなどのあとに呼吸状態が急激に悪化する「急性増悪」が起こることがあります。急性増悪は非常に重篤な状態であり、予後不良となることが多いです。ただし、特発性肺線維症の生存期間には幅があり、近年は抗線維化薬の治療により、長期生存例も増えています。

検査・診断

問診、聴診などの身体診察、胸部X線や胸部CTなどの画像検査、呼吸機能検査を行います。さらに運動時における血液中の酸素飽和度の低下を確認し、病状を評価して病型を分類します。また、聴診時にベルクロラ音と呼ばれるマジックテープをはがすときのような音が聴取されます。

さらに気管支鏡下の肺生検、外科的肺生検、気管支肺胞洗浄が行われる場合もあります。

治療

現時点では治癒が困難であるため、線維化を抑え進行を抑制することが中心です。

薬による治療では、一般に抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)を使います。抗線維化薬には肺の線維化の進行や肺活量の減少を抑え、急性増悪のリスクを低減させる効果があることが示されています。

呼吸機能が大きく低下したり低酸素状態になったりする場合は、在宅酸素療法を行います。在宅時は酸素濃縮器や液体酸素タンクで酸素を補い、外出の際は小型の酸素ボンベを携帯します。呼吸リハビリテーションを行うこともあります。

喫煙は症状を悪化させたり発がん率を上昇させたりする可能性があるため、状態にかかわらず禁煙が必須となります。

セルフケア

療養中

特発性肺線維症と診断された場合は、急性増悪につながる可能性のある感染を予防することが重要です。ウイルスなどへの感染がきっかけになることもあるので、外出時のマスク着用、手洗い、うがいを徹底し、肺炎やインフルエンザ、新型コロナのワクチン接種などを受けておきましょう。さらに、規則正しい生活を心がけ、過労や睡眠不足を避けるようにしましょう。

予防

喫煙しないようにする、吸っている人はすぐに禁煙するようにします。発症を予防することはむずかしい病気ですが、喫煙がリスク要因であるため、禁煙により発症リスクを低下させられる可能性があります。

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監修

がん研有明病院

次富亮輔