全身性エリテマトーデスって? ~新薬で治療が進化

最終編集日:2023/5/15

全身性エリテマトーデス(SLE)とは、膠原病の1つで「免疫」の病気です。

免疫は本来、からだの外から入ってきたウイルスや細菌を攻撃し、自分を守るためにあるものです。しかし膠原病の患者さんでは、免疫が自分自身を攻撃してしまうことでさまざまな症状が現れます。膠原病の中で最も多いのが関節リウマチで、SLEのほかにも全身性強皮症、シェーグレン症候群などがあります。


●SLEはどんな人に多い?

男女比は1対9といわれ、20〜40代の若い女性に多いことが、SLEの特徴です。国内に約6〜10万人の患者さんがいるとされています。


●なぜSLEになる?

具体的な原因はまだわかっていません。遺伝的な影響もありますが、ほとんど遺伝子が同じといわれている一卵性双生児でも、1人がSLEにかかっても、もう1人がかかる確率は25〜50%といわれています。つまり、SLEはいわゆる遺伝性疾患ではありません。遺伝的要因に加えて、環境要因が大きいと考えられています。紫外線を浴びる、かぜなどのウイルスに感染するなどをきっかけに、SLEを発症することが知られています。


●どんな症状が出る?

免疫が自分のからだを攻撃することで、全身にさまざまな炎症が起こります。最も特徴的なのが湿疹で、両頬に現れる蝶が羽を広げたような形の「蝶形紅斑」が有名です。そのほかには、発熱、全身のだるさ、関節の痛み、日光に当たると湿疹が出るなどの皮膚症状、口内炎、脱毛などがあります。他にも腎臓が悪くなったり、精神症状が出たりすることもあります。


●どうやって治療する?

SLEの治療の基本はグルココルチコイド(ステロイド:プレドニゾロン®など)と免疫抑制剤です。いずれも自分自身を攻撃する免疫の活動を抑える働きがあります。ステロイドはSLEの治療に欠かすことができない重要な薬です。しかし、ステロイドには免疫を抑えることで感染症にかかりやすくなるほか、骨粗しょう症、糖尿病などの生活習慣病、白内障などのリスクが高まるという副作用もあります。そこで、症状の重症度に合わせてステロイドの量を調整し、副作用を最小限にとどめることが重要なポイントです。


●新薬が登場

免疫調整剤のヒドロキシクロロキン(プラケニル®)や、免疫抑制剤のミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®)やシクロホスファミド(エンドキサン®)、タクロリムス(プログラフ®)、生物学的製剤のベリムマブ(ベンリスタ®)などが使用されてきました。

その後、2021年に「アニフロルマブ(サフネロー®)」という新薬が登場しました。4週間ごとに1回30分以上かけて点滴で投与する薬です。「サイトカイン」というからだの中の炎症を強くする物質があり、その中の1つにインターフェロンがあります。この新薬はインターフェロンを抑える働きがあり、湿疹や関節の痛みに加え、倦怠感にも効果があるのではと期待されています。


SLEの治療は、近年飛躍的に進化しています。治療をしながら仕事をしたり、妊娠・出産したりする方がとても多くなってきています。長期にわたって生活の質(QOL)を維持し、病気ではない方と何も変わらない生活を長期に持続させることが、現在のSLE治療の目標です。

監修

北海道大学病院 リウマチ・腎臓内科

河野 通仁

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