夏の冷え性を我慢しないで
最終編集日:2024/8/12
「手足が冷える」「お腹が冷える」など、冷え性に悩む人は夏でも少なくありません。東洋医学では「冷えは万病のもと」として、積極的に解消することが必要と考えられています。夏の冷えも、無理をして我慢するのは禁物です。
●冷房と冷たい飲み物で、夏の体は外からも内からも冷やされる
冷えは、体温を一定に保つ「体温調節機能」がうまく働かなくなって起こります。その原因は、体温を保つための熱が不足したり、熱を運ぶ血のめぐり(血行)が悪くなったりしていることです。特に女性は、男性と比べると熱をつくる筋肉が少ないため、冷えを感じやすいといえます。
さらに、夏は「冷房冷え」と「内臓冷え」が起こりがちです。冷房冷えとは、冷房のきいた部屋の中で長時間過ごすことによって、体が冷やされてしまうことです。内臓冷えとは、冷蔵庫でキンキンに冷やした飲み物、アイスクリームなどの冷たい食べ物をとりすぎることによって、体の中を冷やしてしまうことです。体を外からも内からも冷やしてしまうのが、夏の冷え性です。
●冷えを我慢していると、ますます冷えてしまう悪循環
冷え性には自律神経も関係しています。自律神経とは、自分の意思とは関係なく自律的に働く神経のことで、血圧や呼吸、体温、消化、代謝など、生命維持に必要な機能を調整しています。人が活動するために血圧を上げたり、心臓の動きを早くしたりなど、アクセルのように働く「交感神経」と、休息やリラックスをするために血圧を下げたり、心臓の動きを遅くしたりするなど、ブレーキのように働く「副交感神経」の2種類があり、それぞれがバランスよく働くことで身体は制御されています。
この自律神経の働きが冷えを促進してしまうことがあります。体が冷えると、交感神経は血管を収縮させて流れる血液を少なくし、熱が外に逃げないようにします。すると血液のめぐりが悪くなるので、体はますます冷えることになり、悪循環に陥ってしまうのです。そうならないためには、冷えを感じたら、我慢せずに衣服を1枚重ねたり、室温を調整するなどの対応が必要です。
また、冷房のきいた室内と屋外の温度差はかなりあります。そこを行き来するたびに、体は体温を一定に保つため自律神経が忙しく働くことになります。これを繰り返していると自律神経が疲れて乱れるようになり、肩こりや頭痛、だるさ、不眠など、さまざまな身体の不調につながることがあります。
●服装の工夫や入浴、運動などで冷えを解消
自律神経を乱れさせないためにも、体を冷やさず、体温を上げることに取り組みましょう。冷房の設定温度は28℃ぐらいにして外との温度差が大きくならないようにするのがよいのですが、仕事などで冷房のきいた寒い部屋で過ごさなければならないときもあるでしょう。そのようなときは、薄着ではなく、カーディガンを羽織ったり、首にスカーフを巻いたり、足首をしっかりカバーする靴下をはいたりして保温しましょう。冬の冷え性対策の定番である湯たんぽを太ももや腰に当てるのもおすすめです。
食事は、冷たい飲み物や食べ物はなるべく避け、常温や温かいものをとるようにします。夏におすすめの体の熱を冷ます食材(キュウリやスイカ、セロリ、ナスなど)もなるべく控えたほうがよいでしょう。よくかんで食べることも大切です。よくかむと、その刺激が脳に伝わって、熱をつくり出すことに関与する神経ヒスタミンという物質が分泌され、それにより体温上昇が期待できるからです。
さらに、自律神経を整えるためには、就寝前の入浴が効果的です。熱い湯ではなく、38〜39℃ぐらいのぬるめの湯に10分ほど首までつかるようにすると、副交感神経が優位になってリラックスできます。血のめぐりもよくなり、筋肉が緩んで寝つきもよくなることでしょう。また、副交感神経が優位なので、のぼせることなく、発汗も少なくてすむことから、就寝後の深部体温(体の内部の温度)が下がりやすくなり、深い眠りに入りやすくなります。もちろん寝不足は禁物。睡眠時間はしっかり確保しましょう。
また、体の熱は主に筋肉でつくられています。適度な運動をして筋肉を鍛えることもぜひ心がけましょう。
監修
神奈川歯科大学大学院 統合医療教育センター 特任教授/統合医療SDMクリニック 院長
川嶋 朗
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