糖尿病性腎症とうにょうびょうせいじんしょう
最終編集日:2026/4/7
概要
糖尿病が原因で起こる腎機能障害です。初期の段階では自覚症状がほとんどなく、糖尿病の進行に伴って全身の血管に障害が起こり、腎障害がゆっくり悪化します。
腎症がさらに進むと腎不全となり、透析治療が必要となります。透析治療の新規導入の原因疾患のなかではもっとも多く、「糖尿病性網膜症」「糖尿病性神経障害」とならんで糖尿病の三大合併症(細小血管症)のひとつとされています。
原因
糖尿病で高血糖状態が持続すると、特定の臓器だけでなく全身の血管で慢性的な血管障害が引き起こされます。腎臓には、糸球体と呼ばれる毛細血管が塊状になっている部分があり、血液をろ過して尿をつくるフィルターの役割を果たしています。高血糖状態が続くことで、糸球体を形成する毛細血管が損傷を受け、腎臓のろ過機能が低下します。その結果、老廃物を十分に排出することができなくなり、本来は体外に排泄されない、からだにとって重要な物質も尿中に漏れ出るようになります。
症状
「糖尿病性腎症病期分類2023」によると、それぞれの病期の症状は以下のとおりです。
●第1期:正常アルブミン尿期
健康診断での尿たんぱく、尿中のアルブミン量は正常で、自覚症状はほとんどありません。
●第2期:微量アルブミン尿期
尿中のアルブミンが微量に認められますが、自覚症状はほとんどありません。この時期であれば、適切な生活改善や治療によって、糖尿病性腎症の進行を遅らせたり、正常な状態に戻せる可能性があります。
●第3期:顕性アルブミン尿期
むくみ、尿の泡立ち、疲れやすさ、高血圧、貧血、息切れ、食欲不振などの症状を感じるようになります。
●第4期:GFR 高度低下・末期腎不全期
顔色が悪い、激しい疲労感、腹痛、味覚異常、吐き気、筋肉の硬直、手のしびれや痛みなどの症状が現れます。さらに進行すると末期腎不全となり、透析治療の導入が必要となります。
検査・診断
糖尿病性腎症の診断では、尿検査と血液検査を行います。
●尿検査
・尿たんぱく、尿潜血、尿中アルブミン排泄量
尿たんぱくが現れるのは腎症がかなり進行した段階であるため、糖尿病性腎症を早期に発見するには、尿中に漏れ出た「微量アルブミン」というたんぱく質を測定します。
腎症が進行し、腎臓の糸球体を形成する毛細血管のフィルター機能の障害が進むと、本来は体外に排泄されない、からだにとって必要不可欠なたんぱく質であるアルブミンが尿中に認められるようになります。
●血液検査
・推算糸球体ろ過量(eGFR)
血液中のクレアチニン濃度(Cr)を年齢や性別で換算した推算糸球体ろ過量(eGFR) を用いて、腎症の病状を評価します。
治療
腎症の有無にかかわらず、糖尿病の治療は血糖コントロールが基本となります。高血圧を合併することが多いため、血圧コントロールも重要です。
運動療法や食事療法により、適切なエネルギー量、塩分やたんぱく質の摂取量を管理します。ただし、栄養障害やサルコペニア、フレイルのリスクを有する患者(特に高齢者)が多くなっていることから、重度の腎機能障害がなければ、たんぱく質制限を行わない場合もあります。そのため、食事内容については主治医とよく相談しましょう。
薬物療法(薬による治療)では、血糖降下薬やインスリン、血圧管理としての降圧剤などが使用されることがありますが、腎機能の低下に応じて薬剤の調整が必要となります。
●第1期
低カロリー食や運動療法を基本とした血糖と血圧のコントロールによって、腎症の改善が期待できる段階です。尿アルブミン量の測定を定期的に行ない、病状の進行を防ぐことが重要となります。
●第2期
血糖降下薬の服用もしくはインスリンの注射による厳格な血糖管理を行います。この時期は、たんぱく制限よりもエネルギー制限を基本とし、高血圧を合併している場合には、減塩(1日6g以下)を行うなど、血圧管理も重要になってきます。
●第3期
減塩による血圧管理、たんぱく質制限による腎臓への負担軽減、むくみがある場合には水分制限などを取り入れ、より厳格な血糖・血圧コントロールが必要となります。ただし、低血糖にならないよう注意が必要です。
●第4期
食事療法としてたんぱく質の摂取制限を強化します。血圧管理が難しくなったり、尿毒症症状(吐き気、食欲不振、コントロール不良の浮腫)が強くなったりした場合には、透析治療が検討されます。透析治療の導入を少しでも遅らせるため、厳格な血圧管理とたんぱく質制限を継続しながら、医師の指導のもとで治療を進めます。
●第5期(腎代替療法期)
透析療法中あるいは腎移植後の状態であり、医師の指導のもとでの療養生活が必要です。
セルフケア
療養中
第1期のまだ腎症が発症していない段階では、血糖コントロールの改善をメインに、適度な運動、禁煙などを取り入れ、血糖値、血圧、脂質を良好に保つことが腎症の予防につながります。
第2期以降は、病態が一人ひとり異なるため、医師の指導のもとで腎症を悪化させないような取り組みが必要です。
予防
糖尿病性腎症の予防は、血糖コントロールと動脈硬化予防が基本となります。
健康診断で糖尿病や腎機能低下を指摘された場合には、放置せず医療機関を受診し、生活習慣の改善、必要に応じた薬物療法などの指導を受け、定期的な受診を継続することが大切です。
監修
さくら内科・腎クリニック
小林顕子