バージャー病(閉塞性血栓血管炎)ばーじゃーびょう・へいそくせいけっせんけっかんえん
最終編集日:2024/6/18
概要
バージャー病は四肢(両手足)の末梢血管が閉塞をきたす病気です。通常、上肢では肘関節(ひじの関節)より先、下肢では膝関節より下に起こります。男女比は10対1で圧倒的に男性に多く、30~40代に好発します。患者さんの約90%が喫煙者であること、喫煙期間が長いほど発症率が上昇することから、喫煙との強い関係が明らかになっています。
バージャー病は国の指定難病になっています。
原因
原因は不明ですが、背景に遺伝子の関与があるといわれています。たばこに対するアレルギー反応、血液凝固機能に関係するたんぱく質や神経伝達物質の異常、抗好中球細胞質抗体(ANCA)などの自己抗体の関与、細胞接着因子の異常などが考えられています。近年、バージャー病の患者さんに重症の歯周病がみられることから、歯周病菌の関与を示す報告も出されています。
症状
血管が閉塞することで末梢の組織が虚血状態に陥ります。そのため、手足のしびれ・冷感、皮膚が蒼白(そうはく)になるなどが起こります。進行すると、安静時痛、歩行時の痛みと間欠性跛行(かんけつせいはこう:少し休むとまた歩けるようになる)などもみられ、さらに悪化すると、潰瘍ができ、組織が壊死することもあります。
手足の複数の静脈に炎症が繰り返し起こる「遊走性静脈炎」を合併した場合、炎症を起こした静脈に沿うように皮膚の赤み、腫れ、熱感、ヒリヒリ・ピリピリした痛みが現れます。血管に触ると硬く感じられます。
検査・診断
問診からバージャー病が疑われたら、大腿動脈や膝窩(しつか)動脈などの拍動が触れるかを確認します。バージャー病の場合、脈拍の減弱・消失が生じ、左足と右足とに温度差が出ます。手足の先端で血流が悪くなっているため、手足、足の指での血圧を測定します。足首と上腕の血圧の比をみるABI検査も行われます。画像検査として、頭部MRA検査や造影CT検査を行い、超音波(エコー)を用いたドプラ検査や血管造影で、血流の速度、血管の閉塞・狭窄の様子などを精査します。
診断基準として、50歳未満、喫煙者、下腿動脈に閉塞がある、上肢動脈に閉塞がある、あるいは遊走性静脈炎の既往がある、喫煙以外の閉塞性動脈硬化症のリスク因子(心疾患や脳血管障害、糖尿病、高血圧症など)がない、の5項目を満たす場合とされますが、すべての項目を満たすケースは約30%にすぎないため、検査結果などを総合的に判断して診断されます。また、臨床の場では下肢の虚血の重症度を評価するためにいろいろな診断基準が用いられていますが、バージャー病ではおもにフォンテイン分類で重症度を診断します。
●Ⅰ度:無症状、または下肢の冷感・しびれがみられるが短時間で軽快する。
●Ⅱ度:間歇性跛行。歩行中に下肢の痛みや倦怠感が現れるが、休むと改善されて歩行を続けられる。徐々に継続して歩ける時間が短くなる。
●Ⅲ度:安静時疼痛。足を下ろしていると痛みが和らぐ。傷ができやすく、治りにくい。
●Ⅳ度:潰瘍・壊死。
閉塞性動脈硬化症、反復外傷性動脈血栓症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチなどとの鑑別が必要です。
治療
●保存療法
まず禁煙を行います。受動喫煙も避けるようにします。そのうえで、手足の保温・清潔を心がけます。靴ずれなどの小さな傷でも悪化しやすいため、傷つけないように注意します。また歩くこと、手足を動かすことで末端の血流が改善されます。血流改善薬、抗血小板薬、抗凝固薬などを用いて、血流の改善と血栓の予防を図ります。
●血行再建術、交感神経節ブロック
保存療法で改善されない場合は、閉塞した血管を広げるカテーテル治療や、血流のバイパスをつくるバイパス手術が検討されます。しかし、バージャー病では末梢血管が細くなったり弱くなったりしているため、これらの血行再建術を行えない場合もあります。手術ができないケースには、血管を収縮させる交感神経をブロックする治療が行われます。上肢では胸部交感神経節、下肢では腰部交感神経節に対して行われます。局所麻酔やアルコールの注入、高周波電流を用いるなどの方法があります。
セルフケア
予防
バージャー病の原因はわかっていないため、予防法も確立されていません。しかし、発症には喫煙が強く関係していることから、禁煙に努めることが肝要です。また、歯周病との関連が示唆されており、日頃から口腔の清潔を心がけ、定期的な歯科での歯周病ケアを続けることも予防につながるでしょう。
監修
神奈川県立循環器呼吸器病センター 循環器内科 部長
福井和樹
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