バレット食道ばれっとしょくどう
最終編集日:2023/12/4
概要
食道と胃はつながっていますが、粘膜の細胞は、食道が「扁平上皮細胞」、胃が「円柱上皮細胞」と異なっています。
しかし、逆流性食道炎などで、食道の粘膜が胃酸などの消化液の刺激を受けつづけると、食道粘膜の細胞が円柱上皮細胞に置き換わってしまいます。置き換わった部分を「バレット粘膜」と呼び、バレット粘膜をもつ食道を「バレット食道」といいます。
バレット食道は、全周的に3cm以上のもの(LSBE)と、3cm以下のもの(SSBE)に分けられます。国内ではSSBEの頻度が高く、LSBEは1%以下と考えられています。バレット食道の症状は軽度な場合が多いのですが、バレット食道がん(バレット腺がん)の発症リスクが高くなるため、注意が必要です。
原因
多くは、逆流性食道炎からひきおこされます。胃や十二指腸から消化液が逆流してくることで扁平上皮細胞が傷つくことが原因になります。
症状
逆流性食道炎の症状と同じような、胸やけ、呑酸(胃酸がのどまで上がってくる)、げっぷ、のどの違和感、食べ物がつかえる感じなどがみられます。無症状で、健康診断などでの上部消化管内視鏡(胃カメラ)検査で指摘される場合も少なくありません。
検査・診断
上部消化管内視鏡検査で診断がつけられます。
バレット腺がんが疑われる場合には、細胞を採取して組織検査が行われます。
治療
逆流性食道炎の治療が優先されます。プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬が用いられます。PPIの長期服用で、がんの発生を約70%抑制するなどの報告があります。
バレット食道からバレット腺がんになるリスクが高い欧米では、バレット粘膜に対する焼灼療法や凍結凝固療法などが行われています。しかし日本では、現時点ではバレット食道そのものを治す治療法、およびバレット腺がんへの進行を抑制する治療法は確立されていません。
セルフケア
病後
バレット食道がんのリスクとしては、バレット粘膜が全周的に長い(3cm以上)、男性、高齢、喫煙、肥満、慢性的な逆流性食道炎を含むGERD(胃食道逆流症)があることなどが挙げられます。
なお、日本では欧米に比べ、バレット食道からバレット腺がんへの進行はそれほど多くはありません。しかし、診断の結果、リスクが高いと考えられる場合には、定期的に上部消化管内視鏡検査を受けて、経過観察に努めることが重要です。
監修
鳥居内科クリニック 院長
鳥居明
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