毛嚢炎もうのうえん
最終編集日:2023/8/15
概要
髪の毛や体毛の付け根である毛根を包む部分を「毛嚢」あるいは「毛包」と呼びます。毛嚢炎はこの部分に炎症が起こる病気で「毛包炎」とも呼ばれます。また、病変の広がり・深さが進行したものを「せつ」、さらに隣接する複数の毛包に病変が及ぶものを「よう」と呼びます。せつ・ようまで進行するのは、背景に糖尿病などの他疾患による易感染(感染しやすい)状態があるケースが多いです。毛嚢炎は何らかの原因で細菌が感染して起こります。皮脂の分泌の多い顔、うなじ、胸、わきの下、陰部、太ももなどに好発します。
近年は、脱毛処理による毛嚢炎の発症が報告されています。
原因
皮膚にできた傷から感染が起こります。頻度の高い原因菌として、黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌が挙げられます。ブドウ球菌はヒトの皮膚や粘膜などに多く生息する常在菌です。そのほか、マラセチアという真菌が原因になるものは、マラセチア毛包炎と呼びます。感染のきっかけとして、ひげそりの傷や引っかき傷などの外傷、脱毛処理などが挙げられますが、不衛生な公衆浴場での緑膿菌感染も原因になります。
症状
毛穴の部分を中心にして、かゆみや軽い痛み、圧痛(押すと痛い)を伴う赤い丘疹(盛り上がった発疹)が現れます。進行すると、うみをもち、膿疱を形成します。膿疱になると、痛みや熱感などが強くなります。
検査・診断
患部の視診と、発症のきっかけとなる行為などの問診で診断がなされます。尋常性ざ瘡(にきび)、多発性汗腺膿瘍、化膿性汗腺炎など、赤い丘疹や膿疱を呈するほかの皮膚疾患との鑑別が必要です。
治療
多くは、数日から1週間で自然に改善されます。発疹を潰すと痕が残ることがあるため、潰さないようにします。また、できるだけ触らないようにします。
皮膚科での治療は、抗菌薬の外用薬や内服薬が用いられます。膿疱になって痛みや熱感が強い場合には、受診して切開・排膿してもらうほうが楽になることもあります。また、病変が複数個あり、広範囲にみられるような場合にも受診して重症化を防ぎましょう。
セルフケア
予防
毛嚢炎はスキンケアによって改善・予防することも可能です。以下のような点に注意して、皮膚を守ってあげましょう。
●日頃から清潔と保湿に努めましょう。
●ひげそりや、むだ毛処理の際には、かみそり、電気シェーバーなどの使い方に十分注意しましょう。用いる道具も清潔にしておきましょう。
●脱毛後にはとくに丁寧に保湿を行いましょう。
●傷があるようなときにはひげそりや脱毛を行わないようにしましょう。
●日焼け止めクリームなどで紫外線対策をしっかりしましょう。
●症状が出ているときには低刺激の石けんを使い、肌を強くこすらないようにしましょう。
●毛嚢炎用の市販薬もあります。間違って、にきび用の市販薬を用いると症状が悪化することもあるため、薬剤師に相談してから購入をしましょう。
●規則正しい生活、バランスのとれた食事、十分な睡眠と休養などで体力や免疫力を保つことで、皮膚のバリア機能を維持し、感染のリスクを減らしましょう。
監修
関東中央病院 皮膚科 部長
鑑慎司
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