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免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病)
めんえきせいけっしょうばんげんしょうしょう とくはつせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう

最終編集日:2026/3/23

概要

免疫性血小板減少症(Immune Thrombocytopenia:ITP)は、血液を固める成分である血小板が免疫の異常によって減少し、出血しやすくなる病気です。以前は、原因不明を意味する「特発性血小板減少性紫斑病」と呼ばれていましたが、現在は免疫のしくみが深くかかわっていることが判明したため、この名称が一般的になりました。

病型は、診断からの期間によって「新規診断(3カ月未満)」「持続性(3〜12カ月)」「慢性(12カ月以上)」の3つに分類されます。小児では数カ月以内に自然に回復することが多い一方で、成人では1年以上続く「慢性」に移行しやすい傾向があります。なお、この病気は国の指定難病であり、条件を満たせば医療費助成の対象となります。

原因

ITPでは、自分の血小板に対する抗体(自己抗体)がつくられ、この抗体が付いた血小板が脾臓などで破壊されることがおもな原因と考えられています。しかし、なぜ血小板に対する自己抗体がつくられるのかという詳しいしくみについては、まだ十分には解明されていません。

成人では、胃の中のヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染が関与している場合もあり、ピロリ菌を除菌すると血小板数が改善することがあります。

症状

血小板は、出血したときに血を止める働きをしており、いわば「血管の傷口をふさぐ絆創膏」のような役割をしています。血小板が減少すると、ぶつけた覚えがないのに皮膚に青あざ(皮下出血)や点状の出血斑が現れたり、歯ぐきからの出血、鼻血が起こりやすくなったりします。女性では、月経が止まりにくいなどの症状がみられることがあります。

血小板数が著しく低下した場合には、まれではありますが、脳出血や消化管出血などの重い出血が起こることもあり、速やかな医療対応が必要となります。

検査・診断

血液検査で血小板数を調べ、血小板が減少していることを確認します。血小板数は通常15万〜40万/μL程度ですが、ITPでは10万/μL以下に低下します。

ITPは、ほかの病気による血小板減少を除外して診断する病気であるため、ほかの血液疾患や薬剤などが原因となっている可能性がないかを確認します。必要に応じて骨髄検査を行います。また、ピロリ菌感染が関係することがあるため、特に成人の場合にはピロリ菌の有無を調べることが重要です。

なお、血小板に対する自己抗体(PAIgG)を調べる検査もありますが、この検査だけで診断が確定するわけではなく、さまざまな検査結果を総合して判断します。

治療

治療の目的は、血小板数を正常値まで戻すことではなく、危険な出血を防ぐのに十分な血小板数を保つことです。一般には、血小板数を目安として2〜3万/μL以上に維持し、副作用の少ない最小限の治療で管理することが目標とされます。

●経過観察

出血症状がほとんどなく、血小板数にもある程度の余裕がある場合には、すぐに治療を行わず経過を観察することがあります。特に小児では自然に回復する例も少なくありません。

●ピロリ菌の除菌

検査でピロリ菌感染が確認された場合には、まず除菌治療を行います。除菌のみで血小板数が改善し、治療が不要になることもあります。

●副腎皮質ステロイド

免疫の働きを抑える薬で、ITP治療の基本となる薬です。ただし、長期間使用すると骨粗鬆症や糖尿病などの副作用が起こることがあるため、必要以上に長く続けず、状況に応じて次の治療へ切り替えることが検討されます。

●ガンマグロブリン療法

免疫グロブリン製剤を点滴で投与する治療です。血小板数を比較的速やかに増加させる効果があり、重い出血がある場合や手術前などに用いられることがあります。

●抗体療法(リツキシマブ)

リツキシマブは、抗体をつくるBリンパ球に作用する薬(抗CD20抗体)で、血小板に対する自己抗体の産生を抑えることで、血小板の破壊を減らします。副腎皮質ステロイドなどの治療で十分な効果が得られない場合に用いられることがあります。

●新しい治療薬

近年では、血小板の産生を促す薬(TPO受容体作動薬)や、免疫の異常な働きを抑える薬(SYK阻害薬など)といった新しい治療薬が使われるようになり、治療の選択肢が広がっています。

●手術(脾臓摘出術)

薬物療法で十分な効果が得られない場合には、血小板の破壊が多く行われる脾臓を摘出する手術が検討されることがあります。以前はよく行われていましたが、現在では新しい薬の登場により、患者さんの状態や生活背景を考慮して慎重に選択されます。

セルフケア

療養中

●出血のサインに注意する

かぜなどの感染症をきっかけに、血小板が急に減少することがあります。新しいあざが増えたり、口の中に血豆ができたりした場合は、早めに医療機関を受診してください。

●薬の飲み合わせに注意する

痛み止め(解熱鎮痛薬)などの中には、血小板の働きを弱め、出血しやすくする薬があります。ほかの診療科を受診する際は、ITPであることを必ず医師に伝えてください。

●運動について

日常生活や軽い運動は通常問題ありませんが、頭やおなかを強く打つおそれのあるコンタクトスポーツ(柔道、ラグビー、スキーなど)を行う場合は、主治医と相談することが大切です。

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監修

東海大学 医学部血液腫瘍内科 教授

川田浩志