WEB版

血友病
けつゆうびょう

最終編集日:2026/3/23

概要

血液中には、出血を止めるために血小板とともに働く血液凝固因子というたんぱく質が複数あり、それらが連携して血液を固める働きをしています。血友病は、この凝固因子が不足している、あるいは働きが弱くなっているために血が止まりにくくなる病気です。

不足している、または働きが弱い凝固因子の種類によって、血液凝固第VIII(8)因子に異常がある「血友病A」と、第IX(9)因子に異常がある「血友病B」の2つのタイプに分けられます。


原因

先天性血友病は、凝固因子をつくる遺伝子の情報に変化(変異)が生じることで起こる病気です。この原因となる遺伝子は「X染色体」に存在するため、おもに男性に発症します。一方、女性は原因となる遺伝子を持っていても多くの場合は発症せず、「保因者」となるのが一般的です。

先天性血友病の約7割は家族から遺伝しますが、残りの約3割は家族に血友病の患者さんがいない場合でも、遺伝子に新たな変化(突然変異)が生じることで発症します。

なお、生まれつきの血友病とは別に、成人になってから免疫の異常により血液凝固第VIII因子に対する抗体(インヒビター)がつくられ、凝固因子の働きが低下して出血しやすくなる「後天性血友病A」という病気もあります。



症状

血友病Aと血友病Bでは、症状に大きな違いはありません。先天性血友病では、乳幼児期から出血しやすい体質がみられます。特に、はいはいや歩行を始めたりするころになると、転んだり体をぶつけたりする機会が増えるため、皮膚にあざ(皮下出血)ができやすくなります。また、関節の中や筋肉の中で出血が起こることもあります。関節内出血では、関節の痛みや腫れが生じ、関節が動かしにくくなることがあります。筋肉内出血では、腕や太もも、お尻などが腫れて痛みを伴うことがあります。このほか、鼻血や口の中、歯ぐきからの出血、血尿などがみられることもあります。

まれに頭の中(頭蓋内)や消化管で出血が起こることがあり、その場合には命にかかわることもあるため注意が必要です。

一方、後天性血友病Aでは、成人になってから突然発症し、皮膚に大きなあざ(皮下出血)ができたり、筋肉内出血などがみられたりします。


検査・診断

血液検査を行い、血液が固まるまでにかかる時間などを調べます。血友病では、検査項目のうちAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)が延長し、PT(プロトロンビン時間)は正常であることが特徴です。その後、血液凝固第VIII因子や第IX因子の活性(働き)を測定して診断を確定します。凝固因子の活性の程度によって、軽症・中等症・重症に分類されます。

治療

現在の血友病治療では、出血を未然に防ぎ、関節障害を防止して「健常な人と変わらない生活を送ること」を目標としています。

●定期補充療法(基本となる治療)

出血したときだけ治療するのではなく、出血がないときにも定期的に凝固因子製剤を投与し、血液中の凝固因子レベルを一定以上に保つ治療です。通常は週に数回の静脈注射を行います。これにより関節内出血を大きく減らし、関節障害を予防することが可能になっています。

●長時間作用型製剤(EHL製剤)

従来の凝固因子製剤より体内で長く作用する製剤が開発され、注射の回数を減らすことができるようになっています。

●非凝固因子製剤

凝固因子を補充するのではなく、その働きを補う薬剤も登場しています。代表的なものとして、数週間に一度の皮下注射で投与できる抗体製剤があり、静脈注射の負担が大きく軽減され、生活の質(QOL)の向上に役立っています。


セルフケア

療養中

●関節の保護と適度な運動

関節を支える筋肉を鍛えることは、出血の予防につながります。ラグビーや格闘技など、激しい接触(コンタクトスポーツ)は避ける必要がありますが、適切な治療管理のもとで、水泳、ウォーキング、サイクリングなどの運動は積極的に推奨されます。

●口腔ケアの徹底

歯ぐきからの出血や口腔内のトラブルを防ぐため、日頃の丁寧な歯みがきと、定期的な歯科検診を欠かさないようにしましょう。歯科治療を受ける際は、あらかじめ血友病であることを伝え、主治医と連携してもらうことが重要です。

●早めの補充療法(オンデマンド補充)

「出血かな?」と思ったら、迷わず速やかに凝固因子製剤を補充することが大切です。痛みや腫れがひどくなる前の「予兆(むずがゆさや違和感)」の段階で対応することで、出血の拡大を抑え、将来の関節障害(血友病性関節症)を最小限に防ぐことができます。

●応急処置の基本「RICE(ライス)」

出血やけがの際は、速やかに製剤を補充したうえで、以下の4つの応急処置を行いましょう。

R(Rest): 安静にする。

I(Ice): 患部を冷やして出血と腫れを抑える。

C(Compression): 弾性包帯などで適度に圧迫する。

E(Elevation): 患部を心臓より高い位置に保つ。


Xで送る
LINEで送る
Facebookで送る
URLをコピー

監修

東海大学 医学部血液腫瘍内科 教授

川田浩志