鼓膜炎こまくえん
最終編集日:2023/3/13
概要
鼓膜炎は、外耳と中耳の境界である鼓膜に炎症が起きている状態です。急性鼓膜炎と慢性鼓膜炎に分類されますが、病態はさまざまです。両方の耳に起きることはほとんどありません。鼓膜炎のくわしい発症原因は不明ですが、かぜなどの上気道炎から急性中耳炎となり、これが重篤化して鼓膜炎を起こしたり、外耳道炎をきっかけに、鼓膜炎となる場合も多くみられます。
急性鼓膜炎では、耳に激痛を伴うほか、耳鳴りや閉塞感、難聴といった症状が起こります。また、慢性鼓膜炎では、痛みはあまりみられず、耳漏(じろう:耳だれ)が継続的に起こります。なかには長期的な治療を要する難治性の場合もあるので注意が必要です。
原因
鼓膜炎の原因に関しては、免疫疾患との関連が指摘されていますが、くわしいことはわかっていません。細菌感染やウイルス感染が原因として考えられています。
症状
鼓膜炎は、急性と慢性で次のような症状がみられます。
●急性鼓膜炎
急性鼓膜炎は水疱性鼓膜炎とも呼ばれ、鼓膜表面に黄色の水疱(水ぶくれ)がみられます。耳に激しい痛みを伴うことが多く、耳の閉塞感や耳鳴りがみられることもあります。また、外耳道炎や中耳炎を併発することで、難聴や発熱が起こる場合もあります。
●慢性鼓膜炎
慢性鼓膜炎は外耳道炎でくり返す刺激・感染から起こります。肉芽腫性鼓膜炎、肉芽性鼓膜炎とも呼ばれ、鼓膜の表面に肉芽やびらんを形成します。痛みはそれほど強くなく、慢性的な耳だれがつづきます。また、肉芽などで鼓膜が厚くなると、難聴や耳の閉塞感、耳鳴りといった症状が起こります。
検査・診断
鼓膜炎の診断は、耳鏡(耳の穴をのぞく道具)やファイバースコープを使って、鼓膜上に水疱や肉芽、びらんなどができていないか確認します。
急性鼓膜炎の場合、鼓膜にできた水疱の内容物から、原因となる細菌を特定することもあります。また、耳が聞こえにくくなっている場合は聴力検査を行うこともあります。慢性鼓膜炎では、原因となっている菌を特定するために耳だれを採取して培養・検査を行うことがあります。
治療
薬物療法と外科的な処置があります。急性と慢性で次のような治療を行います。
●急性鼓膜炎
炎症や痛みを抑えるため、抗生剤の点耳や内服、消炎鎮痛剤の服用を行います。痛みが強い場合は、水疱を切開して排液することがあります。
●慢性鼓膜炎
耳だれから原因菌を特定し、これに対応した抗生剤を使って治療します。抗生剤による治療で症状が改善しない場合は、根本的な治療を行うために肉芽を除去する場合もあります。
セルフケア
予防
鼓膜炎のくわしい原因はわかっていませんが、耳のいじりすぎによって起こる場合があります。耳のもっとも外側にある外耳には、もともと自浄作用があります。耳垢(耳あか)は外耳の奥にできることはないため、耳掃除は月に1~2回で問題ありません。また、耳掃除に綿棒は適しておらず、昔から使われている竹の耳かきのほうが安全です。市販の綿棒は太くて、耳垢を奥に押し込んでしまうことが多いためです。
監修
耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック 院長
大河原大次
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