鼓膜穿孔こまくせんこう
最終編集日:2023/3/13
概要
鼓膜穿孔は何らかの原因があって、耳の奥にある鼓膜に穴が開いた状態をいいます。鼓膜は厚さ約0.1㎜の薄い膜で、音波(音の波)によって震える(振動する)ことで、音を脳に伝える働きをしています。
原因
鼓膜に一時的に強い圧がかかったり、耳掃除の綿棒などで傷つけられると穴が開きます。
鼓膜が直接損傷された場合を「直達性」、鼓膜への圧の変化によるものを「介達性」と呼びます。
●直達性……耳かきや綿棒で傷つける、花火や溶接などによる熱傷、昆虫の侵入など
●介達性……頬・耳をたたかれる、ダイビングや飛行機の離着陸などによる急な気圧の変化、爆発、強く鼻をかむなど
そのほか、慢性中耳炎によるもの、中耳炎治療(滲出性中耳炎の鼓膜切開やチューブ留置)の後遺症によるものがあります。
症状
音が聞こえづらい(難聴)、耳鳴り、耳が詰まった感じ(耳閉感)が現れます。外的な力で鼓膜が直接傷ついた場合は、耳の痛み、耳からの出血がみられます。損傷が重度な場合は、難聴が重度になり、めまいが起こることもあります。
検査・診断
問診と、耳鏡検査、耳の顕微鏡検査、聴力検査などが行われます。中耳炎が原因の鼓膜穿孔の場合は、インピーダンス検査で鼓膜の振動の様子をみます。症状が強い場合には、鼓膜だけでなく内耳や耳小骨などに穿孔がないかどうか、CT検査を行うこともあります。
治療
鼓膜穿孔の約80%は自然に閉鎖するとされています。ただし一般的に、熱による損傷や細菌感染のある場合には自然閉鎖しにくいといわれています。
●経過観察・保存的治療
外耳道に出血があれば、血液の吸引除去を行います。穿孔部位から細菌感染が起きていたら、抗菌薬を、耳鳴りや難聴があればステロイド薬を用います。
経過観察中、耳の乾燥と清潔、安静を保つ必要があります。入浴時・洗髪時・洗顔時などに耳に水が入らないようにする、水のなかに入ったり泳いだりしない、強く鼻をかまないなどを心がけます。
●手術
2~3カ月経っても鼓膜が自然閉鎖しない場合に考慮されます。手術には鼓膜穿孔閉鎖術(鼓膜再生術)、鼓膜形成術、鼓室形成術があり、穿孔の程度や合併症の有無にあわせて選択されます。2019年に保険適用となったトラフェルミンという線維芽細胞増殖因子(鼓膜の再生を促す薬)の登場で、鼓膜再生術は低侵襲なものになりました。
また、損傷が重度で耳小骨が障害されていると、内耳の体液が外に漏れ出していることがあります。その場合は、外リンパ瘻閉鎖術を行います。
セルフケア
予防
耳掃除で鼓膜を傷つけることが多く、注意が必要です。子どもの場合は動いてしまい、傷つけることが多いため、家庭では行わずに耳鼻咽喉科で耳垢(耳あか)を取ってもらうのが確実で安全です。また大人の場合も、子どもや他人がぶつかるなどで鼓膜を傷つけることがあるので、耳掃除は周囲にも気をつけて行いましょう。
監修
耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック 院長
大河原大次
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