ペルテス病ぺるてすびょう
最終編集日:2025/3/14
概要
股関節は大腿骨(太ももの骨)の先端部にある骨頭と呼ばれる球面をもつ組織と、骨盤にある臼蓋(きゅうがい)と呼ばれる椀状の組織から成り立っています。ペルテス病では、大腿骨の骨頭の血流が十分でなくなり、組織が壊死してしまいます。似た病態を表す成人の病気に「大腿骨頭壊死症」があります。大腿骨頭壊死症では壊死した組織は再生しませんが、発育期の小児が発症するペルテス病では2~3年で再生する力をもっているのが特徴です。しかし適切な治療が行われずに壊死した骨頭がつぶれて変形すると、可動域制限(動く範囲が狭くなる)を生じ、将来の変形性股関節症の原因となります。
ペルテス病は4~13歳にみられ、発症のピークは6~8歳にあります。1万人に約1人の発症頻度で、4~6対1で男児に、とくに小柄で活発な男児に多いとされています。ほとんどは片足にのみ起こりますが、約10%に両足発症がみられます。しかし両足同時に起こることはまれです。
ペルテス病は整形外科で専門的な治療を行います。
原因
大腿骨頭に壊死が起こる原因は、外傷、内分泌の異常、血液凝固機能の異常などが考えられていますが、まだ明らかにはなっていません。
症状
股関節や大腿部(太もも)、ひざなどに痛みが起こります。足を開く・ねじると痛むため、可動域制限がみられ、足をひきずる跛行(はこう)も起こります。なかには跛行があっても痛みを訴えないケースもあるため、注意が必要です。
検査・診断
歩き方の異常、股関節の可動域制限、痛みなどの症状でおおよその診断がつけられます。X線検査を行い、大腿骨頭がつぶれている様子を確認しますが、初期にはX線画像にうつりにくいこともあるため、MRIを用いて確定診断がなされることもあります。
骨頭の状態によって、①初期(滑膜炎期)、②硬化期(壊死期)、③修復期(分節期)、④再生期(残余期)の4つの病期に分けられます。
ほかの股関節炎、骨折などとの鑑別が必要です。
治療
ペルテス病は、2~3年で壊死した大腿骨頭の組織が再生します。組織を正しく正常な形に復元(再生)させるためには、復元するまでの期間、大腿骨頭を変形させずに、臼蓋の正しい位置に納めて再生を図ることに治療の目標が置かれます。保存療法と手術がありますが、国内では保存療法が基本となっています。患者の年齢、病状、進行具合などを考慮して治療法が決められ、効果を評価しながら進められます。
●保存療法
まず股関節の炎症を抑え、痛みを軽減させるために、「免荷(負担をかけないようにする)牽引療法」を行います。24時間の牽引を数週間続けるため、病院によっては入院して行う場合もあります。炎症が落ち着いたら、装具を装着する「装具療法」が開始されます。装具によって壊死を起こした大腿骨頭を常時臼蓋内に納めることで、臼蓋の椀状を利用して骨頭がもとの球形に復元するのを促します。装具療法では免荷を図るとともに、装具をつけたまま可動域を広げるリハビリテーションを行います。病状に合わせて、さまざまな装具を適切に使うことになります。
●手術
ペルテス病の治療開始が遅れた場合や、保存療法で十分な効果が期待できない場合に考慮されます。手術によって大腿骨や臼蓋を変形させて、残っている組織で支えられるようにする「骨切り術」が行われます。
セルフケア
療養中
ペルテス病の治療は、大腿骨頭が再生し、その後組織が安定して通常の生活が送れるようになるまでに5年前後かかり、入院期間も1~2年と長期にわたることがあります。ベッドの上でじっとしている期間も長く、元気な子どもにとってつらい状況です。また、退院後も数年は大腿骨頭に負担をかけない生活を送る必要があり、杖の使用や運動の制限、生活上の制限(重い物を持たないなど)があり、定期的な通院も必要です。
周囲の大人は焦ることなく、前向きな姿勢で医師、理学療法士、学校関係者などと密に連携をとって治療に取り組むことが肝要です。
監修
東馬込しば整形外科 院長
柴 伸昌