肘内障ちゅうないしょう
最終編集日:2025/3/6
概要
いわゆる「ひじが抜けた」状態になるのが肘内障です。前腕の親指側にある橈骨(とうこつ)のひじの部分(橈骨頭)を包み、外れないように押さえている輪状靭帯から、橈骨頭が外れかけている状態(亜脱臼)を指します。
5歳くらいまでの小児に好発し、7歳を過ぎるとほとんどみられません。
原因
ひじの関節に外から力が加わることで起こります。手をつないでいて子どもが転びそうになり腕をひっぱった、子どもを起こそうとして腕をひっぱった、友だちにひっぱられたなど、腕・手をひっぱる行為がきっかけになることがほとんどです。そのほか転倒時(腕を下にして転んだ、不自然に手をついたなど)に起こることもあります。まれに、きっかけとなる行為が不明の場合もあります。
5歳くらいまでの小児は靭帯や骨の発育が未熟であるため、亜脱臼を起こしやすいと考えられています。
症状
上記のようなきっかけのあと、急に泣き出し、腕をだらりと下げたまま動かさなくなった、触ったり動かそうとしたりすると痛がるなどの状況が起こります。通常、ひじ関節周囲の腫れはありません。
このような症状がみられたら、整形外科を受診します。
検査・診断
「肩が外れた」あるいは「手関節を痛めたようだ」という理由での受診が多く、問診で発症のきっかけや症状を確認し、ひじ関節の視診・触診で診断がつけられます。さらに、超音波検査で関節内に引き込まれて挟まっている筋肉や靭帯を確認することで、診断が確定します。
ひじの周囲が明らかに腫れている場合や、超音波検査で骨折も疑われる場合は、X線検査も行います。また、肩や腕など、ほかの部位にけががないかも確認します。
治療
徒手(器具を使わず手による)で修復術が行われます。外来で行い、麻酔も不要です。亜脱臼のほとんどはこれで改善されます。超音波検査によって、関節内に引き込まれて挟まっていた筋肉や靭帯が介助されていることで修復が確認されます。さらにしばらく時間をおいて、ひじが曲げられるか、腕を上げられるかを確認します。
治療後は外固定などの必要はなく、通常の生活が送れます。
セルフケア
病後
肘内障は再発するケースがあるため、腕をひっぱる行為を避けるように注意します。再発時には、同じように修復術を行います。
成長とともに再発の頻度も減っていきますが、10歳を過ぎてもくり返すようなら、ほかの病気が隠れているかもしれないので、整形外科での相談が必要です。
監修
東馬込しば整形外科 院長
柴 伸昌