飲み忘れ、飲み残しの処方薬 ~困ったら薬剤師に相談を

最終編集日:2022/11/10

●高齢者に多い残薬問題。はじまっている薬剤師の取り組み


残薬とは飲み忘れや飲み残しでたまる処方薬のことで、その換算額は475億円になるとのデータもあり(*1)、厳しい医療財源の中、無駄の排除が求められてきました。

地域包括ケアシステムや在宅医療の推進等により、地域医療を取り巻く状況が大きく変化し、薬剤師が在宅医療に参画する機会や患者さん宅で残薬を発見し、服薬支援を行うケースが増えました。地域ごとの薬剤師会等による残薬の実態調査活動も増えつつあり、さらに2014年(平成26年度)から厚生労働省による「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点推進事業」の中で、飲み残しや飲み忘れ防止対策、高齢者服薬支援、残薬回収や残薬ゼロへの取り組み等が推進されるようになりました。

その状況をふまえ、残薬の実態把握と先駆的な取り組みをとりまとめる調査(*2)の結果、各地域の取り組みとしては、服薬管理、残薬整理バッグやブラウンバッグ(家庭の残薬を薬局に持ってきてもらい、整理して以降の処方量などを調整する施策)の導入などがみられました。中でも滋賀県薬剤師会では薬剤師が残薬確認に介入し、患者さんに飲み残しの原因を聞くなどの調査を行った結果、残薬を回収した患者さんのうち、8割以上が70代以上であり、換算金額が高いのも同様に70代以上の高齢者であることがわかりました。


●改善の鍵は薬剤師への相談。飲めない要因に応じた対策を


残薬発生の理由は、意図的でないものと意図的なものに分かれます。前者は飲み忘れであり、高頻度な場合は、ポリファーマシー(薬の数が多い状態)の問題に加え、患者さんの生活習慣と服用タイミングの不一致、患者さんの認知機能の低下などが背景にあります。意図的な場合は患者さん自身の判断(調子がよいから・気分が悪いから飲まない、飲み切れない、薬への不安等)によるものです。

飲み忘れの対策としては、お薬カレンダーの使用(薬のPTPシートに直接飲む日付を記入するのも有効)や数種ある薬の一包化(袋ごとにマジックやシールで印を付けて区別するのもよい)、服用タイミングを知らせるアラームやアプリの使用、保管場所の工夫などが有効です。服用回数が多い場合、配合剤や服用頻度が少ない薬への変更、経口薬から注射への変更を薬剤師に相談することも検討できます。調剤薬局を一元化し、薬剤師に服用数をチェックしてもらったり、薬剤師の訪問サービスの利用などもおすすめします。

残薬は本来飲むべき薬を飲まないことで生じる患者さんの病気への影響も憂慮されます。意図的に服用を止めてしまうケースも含め、自身の病気の進行と薬を服用の必要性をしっかり把握しておくことも重要です。


*1……平成19年度 老人保健事業推進費等補助金「後期高齢者の服薬における問題と薬剤師の在宅患者訪問薬剤管理指導ならびに居宅療養管理指導の効果に関する調査研究」

*2……医療保険財政への残薬の影響とその解消方策に関する研究(平成27年度 厚生労働科学特別研究)

監修

東京薬科大学薬学部 教授

益山光一

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